2007-01-01から1年間の記事一覧

そんなこと、出来なければ良いのに

「そんなこと、出来なければ良いのに」と、 新聞で脳死判定やドナーの記事が出ると思う。 誰だって自分や親しい人が死ぬのは嫌だし、 どうしようもない状況で術があるなら縋りたくなる。 当たり前だ。 脳死、植物状態と言われる人にも血液は流れ、息をしてい…

一期一会

北風に、音を立てて欅並木の梢が揺れる。 ザザ、ザザァと頭上に音の道が行く。 先の尖った薄茶の葉っぱが、次柄次へと降ってくる。 道路は所々に枯葉の吹き溜まりを作り、カサカサ、カラカラと葉の転がる音に満ちる。 そうして枯葉たちは車が通るたび、クシ…

落ち葉焚き

段々に東京も寒くなってきた。 日付の変わる頃、ふと空を見上げると、オリオン座が天鵞絨のような夜の中で静かに輝いている。 街灯の灯りが無くても夜道を歩けそうで、街灯を全部取り払ってしまいたいような気になる。 白い星、赤い星、季節とともに星が大き…

元号と西暦

ぽかりと大きな欠伸をひとつ。 まだお布団の記憶に支配されている体に今日の空気を送り込む。 喉や鼻が少し乾いたような気がして、湿気の多い夏が少し恋しくなる。 息をするだけでツンと痛みを感じるほど寒い季節も見えてきた。 今年もあと3ヶ月を切った。 …

世界は私を中心にしはしない

何もできなくても、側にいられれば何かにはなるのではないか。 どんな遠くにいても、少しの声、少しの気配で何かにはなれる。 何もすることが出来なくて、思いを伝えることが難しくても、 思うことそのものが何かになるのではないか。 おこがましいけれどそ…

鬼灯の残る

コップの中で鬼灯が揺れる。 入っていた実も消えて、中を守るための骨組みだけが朱色の籠となって姿をあらわす。 窓から陽射しが差し込むと、金魚のように活き活きとした色彩がコップで躍る。 朱の鮮やかさがとても綺麗で、コップに指を入れクルクルと動かす…

泣くなよ 泣かないよ

台風の夜。 家ごと吹き飛ばしそうな風の中で、 もしも今、屋根が吹き飛んだらどうするだろうと考えた。 小さな頃に見た人形の家のように屋根がガポっと外れて、 雨と風がドウドウと部屋の中を駆けずり回り、 本を巻き上げ、布団を濡らし、友人からの手紙や写…

大きな打ち水

薄っすらとした雲の向こう側から 半分より少しふっくらとした大きな月がのぞく。 このところは雨音のように蝉の声が降る夜もあれば、 蝉の声は控えめで、コオロギ達の囁きが夜を満たす。 そんな日が交替しながら続いている。 突然、凄まじい蝉の声がした。 …

来月を待つ

来月、また友人が結婚する。 もう8年近くの付き合いの友人だ。 色々と遊んだり、様々に笑ったり。 10人ほどのグループの中で、彼女と彼が付き合いだした日も、私達は一緒にいた。 スキー場で、お互いを見る視線の熱さに、冷やかしたり、苦笑したり。 とろ…

残暑見舞いの季節

36度、37度・・・一体誰の体温かと伺うような日が続いている。 ぎっちりと詰まった車の列の脇を通ると、熱い空気の塊が道路から襲い掛かってくる。 この所の厳しい暑さは半端なものではなく、長袖の服など着ていると日に3度は着替えてしまう。 噴き出し…

自転車あそび

道端に止まったスクーターから、古い時計が秒針を刻むような音がした。 メトロノームより少し硬い音が、チッチッチッチと段々小さくなっていく。 音の間隔が広がっていく。 スクーターが頑張って走って熱くなったから、 外気で冷やされた鉄が、こんな音をさ…

金の砂まく

金砂を振りまく夢を見た。 掌に乗せてるだけで、ふわふわと風に遊ばれるような 細かな金が、手の間から流れだすように。 手の中の重みに合わせて180度腕を横に滑らすと、手はすっかり軽くなり、 空気のように金が舞う。 ふわふわと漂う金が、静かな朝の薄…

お酒の中でアメリカ話

昨日、友人と中国茶を飲んで家に帰ると、 両親の友人が1人いらしてて、テーブルにはワインの赤白から日本酒、 ポート、アクアヴィッツと乱立する酒瓶の間を料理が埋める世界が広がっていた。 来られることは存じませんが・・・軽く挨拶、軽く乾杯。 白飲み、…

参院選つれづれ

「台風だから・・・」と、遊ぶ予定の友人に振られた3連休。 雨の降る中、銀座へ行った。 知り合いのダンディなおじさまが和光で絵の展示をしているというので、 ひょこひょこ行って、目の保養。 和光に勤める友人に挨拶し、雨の止んだ表通りへ出た途端。 凄…

旅行でちょっとありました

「1人で海外に行くと何かが起こる」 起こるトラブルの深刻度は距離に比例するかもしれない。 6月、友人が韓国で式を挙げるというので成田へ向かった。 1泊2日の強行軍。 国同士の取り決めがあるようで、一泊二日の運賃は二泊三日の倍以上。 「一泊の滞在で…

金の砂まく

金砂を振りまく夢を見た。 掌に乗せてるだけで、ふわふわと風に遊ばれるような 細かな金が、手の間から流れだすように。 手の中の重みに合わせて180度腕を横に滑らすと、手はすっかり軽くなり、 空気のように金が舞う。 ふわふわと漂う金が、静かな朝の薄…

丸の内ストリート陸上

空を飛べたらどんな気分になるだろう。 しばらく前、為末大選手(ハードル)主催の丸の内ストリート陸上を見に行った。 行きたいと思ったメインの理由は4つ。 以前、テレビで為末選手のレースを見て、綺麗だと思ったこと。 ミリオネアで掴んだ1000万円…

麦藁のおじさんと少年

突き刺すような日差しを抜けて電車へ入ると、 麦藁帽子をかぶったおじさんがいた。 ちょうどおじさんの目の前の席が空いていて、 すぽりとはまり込むように私は座った。 おじさんの麦藁帽子はつばが広くて、 緑色の紐がつばの上を一巻きぐるりと巻いて、 首…

ナメクジ日本、モンゴル北京

少し前こと。 正月の家族旅行で祖母が一目惚れした地球儀が届いた。 直径が50cm程の大きさで、表面には猫目石や紅水晶などの石が 国境線で区切られるかたちで張られている。 石の厚みはとても薄いらしく、ひんやりとした手触りから思う重さよりも随分軽…

トンボの錯覚

いつもより早い時間に目が覚めた。 気がつくと、カーテンから漏れる朝の陽射しが強くなっていた。 カーテンの脇や裾がギラギラとするほど、日中の暑さが予想されて カーテンを開くのに躊躇する。 思い切って開けてしまえば、そんな気持ちも吹き飛んでしまう…

そっと見掛ける

最近よく通る道。 ちょっと前まで ジャスミンの白い花の群れがどこかの家のベランダから垂れ下がり 甘い香りをさせていた。 少し前の晩。 中東のどこか出身のような男性が、真っ白な花の群れの前で目を閉じて深々と息を吸い、 沢山の花の中からこっそり一枝…

初夏

強くなった日差しを木々の葉が弾くと、鈍い金属のような不思議な光り方をする。 椿科の艶々とした葉っぱなどを見ていると、 植物にとって油の乗り切った季節というのは今なのではないかと思う。 風が、若葉の間をすり抜けて行くと、パラパラ、ざわざわと、音…

少年法改正について②欠如した視点

子供は幾つになったら責任能力を持てるのだろう。 人を形作っていくのは一体なんだろうか。 環境だろうか、資質だろうか。 全てで、そして、それ以上だろうか。 私が現在目を通しているメディアは、少年法改正案について、 年齢を下げれば良いわけではないと…

少年法改正について

最近、どの新聞を見ても、少年法改正案について取り上げていることが多い。 2000年に16から引き下げられた 現在の刑罰対象年齢開始の14歳を、それ未満に引き下げるという話だ。 少し前には与党案の「おおむね12歳以上」という表現に 「おおむね」…

幹事の結婚

5月1日。今日はまた雨。 秋や冬と違い、 この季節は土の匂いに混じって 青々とした草の香りや、藤や茉莉花の甘い匂いがする。 きっと、1年でもっとも甘い雨の匂いだ。 雨はさらさらと細かに降っている。 風が吹くたび、雨も揺れる。 その定まらなさが、愛…

歯の保存

ここ数日急に、息の白くなるような日が続いた。 桜も終わった季節にこんな寒いなんてと震えながら、 しまいこんだセーターを引き出し、ホッカイロを買って握っていた。 それが、今日はスパッと晴れて陽射しが梢の上で踊っている。 温かな風が部屋に滑り込み…

藤の日付

もう、桜が散ってしばらく。 花弁の間に青々とした葉が覗いていたのも、 雨に打たれた花弁が桜の脇の壁を薄紅色に染め替えていたことも、 道路の水溜りから排水溝へと流れていく水面の花弁がくるくると回っていたことも、 庭に面した窓を開けると真っ白な星…

花捜し

青空の下、花弁が一枚、二枚、そして、沢山。 風が吹き、薄紅色の花弁に覆われた枝が揺れる。 小さなはなびらは視界を染めるように舞い落ち、舞い上がり、 つむじ風の中に紛れ込んでは、道々を桜の回廊へと変えてゆく。 電車から外を見れば眼下に川沿いの桜…

卒業の頃

昨日、初雪が降ったという。 実際、風は突き刺すように冷たくて、 扉から外に出たのにコートを替えにあわてて家に戻った。 先日、早稲田の方へ行く用事があった。 我が家の辺りの桜は冬芽の周辺がほんのりと淡い桃色に染まって見える。 まだまだ、桜の枝に色…

春と香りと

風が、甘い。 まだ薄手のマフラーが必要なほどの寒さの中、強い風が吹いている。 服の隙間から寒さが入り込んで来ないように上着のチャックを上げた。 感じる空気や風は明らかにまだ寒いのに、 口に含んだ空気さえ甘いと味で感じられるほど。 少し前まで風に…