ナメクジ日本、モンゴル北京

少し前こと。
 正月の家族旅行で祖母が一目惚れした地球儀が届いた。
 直径が50cm程の大きさで、表面には猫目石や紅水晶などの石が
 国境線で区切られるかたちで張られている。
 石の厚みはとても薄いらしく、ひんやりとした手触りから思う重さよりも随分軽い。
 
 正月に頼んだのに、船便で出すのが遅かったせいか。
 可愛いおまけが同梱されていた。
 直径15cmほどの地球儀の文鎮。
 祖母は「可愛いおまけが入っていたの」と、お気に入りの地球儀が増えてご満悦。
 あんまり可愛いといわれるもので、2つの地球儀に拝謁に行くと・・・。
 
 おまけの日本に北海道がいない。
 四国、九州、沖縄も。
 日本付近には、ナメクジのような本島がターコイズの海の中にぽてっと鎮座していた。
 
 「おばあちゃん!これ日本ナメクジよ!」と、思わず祖母へ呼びかける。
 母が覗き込んで大笑い。
 祖母が「あらぁ」と言って大笑い。
 3代揃って「嫌だ」「あらあ」とクスクス、ケラケラ。
 なんとも言えない。

 日本は、この地球儀を作った人にはこれほどまでに遠いのかと
 笑いながら次から次へと友人に写メールすると、
 携帯の小さな画面にも関わらず、
 「ベーリング海に無い筈の島!」
 「オーストラリアより日本が大きい!」
 「韓国と北朝鮮が一体化!」
 「ロシアがすっかりモンゴル併呑!」
 「北京がモンゴル!」と、実に皆様地理に詳しく目ざとくて、
 腹筋運動が止められない。

 日本の地図に北海道が入っていなかった時代はいつ頃か。

 北海道から四国、九州まで伊能忠敬の測量結果が幕府に提出されたのが1821年。
 フランスでフランスの地形図が出来たのが、伊能忠敬が亡くなった1818年。
 英国艦隊に地図が知られて小型版の地図がヨーロッパに持ち帰られたのが1861年。
 (上記、伊能忠敬研究会ホームページ年譜より)
 
 ヨーロッパに日本の地図が渡って146年の時が経つ。
 その間、2度の世界大戦があり、ジャポニズムも興った。
 インターネットの隆盛、教育の一般化。
 マスメディアの発達。
 
 もうちょっと知られていてもいいのにな。
 と、そう思う反面、0よりはましかとも思う。

 日本は小さすぎるとは言わないけれど、小さな国だ。
 日本語は世界の中心言語でもなければ、人数だって世界の人口と比べたら微々たる物だ。
 でも、とりあえず世界の何処でも「日本」といえば「ああ」と言われる。
 小さい割りに知名度で頑張っているのは、「日本asNO.1」の時代があったからかもしれない。

 これで満足とすべきなのだろうか。
 やはりもっと知ってと頑張っていくべきなのだろうか。
 情報が多ければ、自然とその国の地図もなんとなくは頭に入ってくる。
 日本人の殆どが、ヨーロッパは難しくても、日本の形や
 アメリカ大陸の形がどんなか何となくはわかるのと同じように。
 
 但し、情報には良いイメージもイメージがある。
 私たちが北朝鮮がどんな形か何となくわかるのは先日もあったミサイル発射。
 拉致、核施設などの殺伐とした情報からだ。
 
 できるなら、なんとなく楽しそうな、嬉しそうなイメージ発信国日本として
 ナメクジ形を卒業できると良い。
 
 ただ、いやなことがあったとしても、
 目をつぶっているわけにもいかないのだから、なかなか難しくはあるけれど。