歯の保存

 ここ数日急に、息の白くなるような日が続いた。
 桜も終わった季節にこんな寒いなんてと震えながら、
 しまいこんだセーターを引き出し、ホッカイロを買って握っていた。
 
 それが、今日はスパッと晴れて陽射しが梢の上で踊っている。
 温かな風が部屋に滑り込み、そっと巡回して帰ってゆく。
 ベランダの葱坊主の頭が、ふわふわと揺らされている。
 木々の葉の擦れ合う音の影から、雀の声が聞こえる。
 甘くて青い春の匂いがする。

 こんな日は外へ誘われる。
 新宿御苑はきっとのんびりしたい人で一杯だろうし、
 少し遠い河原へ行けば、リトルリーグの小さな選手達の姿があるかもしれない。
 
 浮き浮きして、何故かワクワクと勝手に足が歩き出す。
 楽しいことがないかと探しに行きたくなる。
 楽しそうに笑っている人の顔が見たくなる。
 気持ちの良い日はとても素敵だ。
 いつもよりもっと良いことがあるような気がする。

 早く外へ出なくては^^

 さて、野球というので思い出したのだけど、
 先月の毎日新聞に、ある大阪の歯医者さんの話が載っていた。

 今年の1月に癌で亡くなったその方は、不慮の事故で抜けてしまった
 歯の保存液の普及を日本高校野球連盟にすすめていた。

 この保存液というのは、抜けてしまった歯を漬けて、
 24時間以内に再移植すれば、
 歯がそのまま復活する可能性が高いというものだそう。
 
 硬球が当たって歯が抜けてしまう事故に対処するためにと、
 用意を訴え、
 日本高校野球連盟は昨年から甲子園出場校にその保存液を配ることを決めたそうだ。
 
 亡くなった彼の遺志を継ぎ、
 今年は彼の所属していた病院が保存液を48本日本高校野球連盟に送り、代表者会議で配布された。

 と、そうしたことが書いてあった。

 歯が抜けてしまった場合、保存液がなければ
 その歯を牛乳や、生理食塩水に漬けて置くのも、
 再植が成功する可能性があるらしいけれど、
 やはり専門の保存液があるなら安心。
 きっと雑菌も入りにくいだろう。
 
 その保存液は高価なものなのだろうか。
 記事によれば30本、40本というレベルでしか配布されていない。
 使うかどうかわからないものに割くには高いというレベルなのか。
 本当に高いのか。
 少しネットで検索してみたけれどわからなかった。
 
 もし、値段がそこまで高いものでないのなら、
 野球ばかりでなく、柔道、ボクシング、剣道、バスケ、小学校〜高校、大学、
 スポーツジムなど、事故で歯が抜けてしまう危険性があるようなところには
 置くことを義務付けるというぐらいのことをしてほしいと思う。
 震災などの災害バックにだって入っていて欲しい位だ。
 
 下の世代になるにつれ、食べているものは柔らかになり、
 顎は小さく、上の世代に比べれば歯も弱くなっている人が多いように思う。
 
 顎がそこまでしっかりしていないのだから、
 歯の根も下の世代の方が浅いのではないだろうか?
 抜けやすいのではないだろうか?

 亡くなった歯医者さんの遺志を継いだ、
 高野連のこれからの行動で、野球だけでなく、
 様々な分野で保存液が広がり、避けられる災難を避けられる人が増えますように。
 心から願います