金の砂まく

金砂を振りまく夢を見た。



 掌に乗せてるだけで、ふわふわと風に遊ばれるような
 細かな金が、手の間から流れだすように。
 手の中の重みに合わせて180度腕を横に滑らすと、手はすっかり軽くなり、
 空気のように金が舞う。
 
 ふわふわと漂う金が、静かな朝の薄暗さの中、ゆっくりと下降してゆく。
 私は次の金の粉を掬い取り、ざっと空へ撒いてみた。
 突風がキラキラ光る小さな雲を空の上へと連れ去っていった。



 ふと、海の匂いを感じた。
 足首の辺りに小さな波が軽やかな音を立ててぶつかってくる。
 足の裏の砂が滑って脚がずぶりと砂に潜った。



 暗かった空が段々と藍の色を増し、黒々とした波がじょじょに姿を現してくる。
 私は金の砂をまく。
 風が金砂を掴んで、波の上で柔らかにとぐろを巻く。
 何度も、何度も、金をまく。
 金は波の上を漂い、滑り、波と波との間で弾けた飛沫に乗って海へ潜ったり。
 
 海の上にいくつもの金の旋風が出来て空へ昇った。
 海へ落ちた金の粒達は、真っ黒な海の中でもポゥッと光って、
 海底へ降りたりふわりと上がったりを繰り返す。
 どこかの魚が、金をつついて、くしゃみした。



 シャランと、どこかで金のぶつかる音がした。
 遠くの海の端っこが、遠くの空が、ちょろりと白い。
 頭の後ろに黒の空。
 遠くの空は珊瑚色。
 
 金の粉を撒く。
 金砂は朝と夜との間に入りこんで消えていく。
 
 そしてするすると太陽が上がり
 金砂は光に溶けて朝が来た。
 
  
 そんな夢を見た