2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

駆け引き

原っぱを、尖った耳をした白い犬を連れておじさんが行く。 夏の間は上半身裸で日光浴をしていた人も沢山いたけれど、秋の昼時。 天然日焼けサロンは開店休業。 原っぱはおじさんたちと、遠くに見える赤い自転車だけのもの。 陽射しは透き通るほどに金色で、…

三輪壽雪さん、明日まで

朝から窓を開け放したままにしていたら 部屋が金木犀の香りに染まっていた。 お日様にあたってふかふかになった布団にゴロンと寝転び 大きく息を吸って伸びをした。 風が部屋の外の竹の葉を揺らし、せせらぎのような音を立てた。 やわらかく吹き込んでくる風…

虹の根元

夕方、銀座の空を見上げると 紗の様に薄い赤の掛かった青空に朱金に光る雲が浮いていた。 空はどこまでも高く、雲もビルのぐんと上にあり、 思わず息を止めてしまうほど綺麗過ぎて、どこか現実離れして見えた。 「不思議に綺麗ね」と思わず母に言うと、 母は…

朝食の起源

熱々のイングリッシュマフィンを二つに割って、 黄金色の蜂蜜をとろりと入れて、小麦胚芽の粉をどっさり挟んでパクリ。 マフィンのさっくりふんわりとした感触と小麦粉の甘味、 蜂蜜のじゅわっと広がる甘さと胚芽の香ばしさ。 食べている間に胚芽が散るのが…

歌舞伎に行ってきたけれど

今日は歌舞伎座昼の部へ。 高校時代、 「吃又(どもまた)」の吉衛門さんを皮切りに歌舞伎座に通い詰め、 高校時代に得たお金のほとんど全て歌舞伎につぎ込んだと言える私としては、 吉衛門さんが出ている「引き窓」はやはり良くて涙したものの、 同じく出演…

一部停電

一昨日の未明、東京は凄まじい雷雨に見舞われた。 雷が落ちる度に震度3ほどの振動が寝台に伝わり、 本棚の本がばさばさと落ちる。 尋常でないほど大きな雨粒が吹き荒れる風にまかせて窓や壁にぶつかると、 木造の家の筈なのにまるでトタン屋根の下にいるよう…

ちょっぴり間抜け

夕方を過ぎて、体の中にこもるようだった暑さが すぅっと抜けていく。 涼しい風が部屋の中にもわりと寄り道をしていく。 昼間の暑さがまだ体の芯に燻るようで、 窓際にござでも引いて寝たい誘惑に駆られるけれど、夜はもう秋。 風邪を引くのは必至でぼんやり…

だから、人を殺してはいけない

ニュースを見ていると 友人を殺してしまったのではないか?と言われていた容疑者の少年の遺体が発見されたと 報道されていた。 高等専門学校の同級生を何故?とTVも新聞も様々に取り上げている。 少年のご両親は少年が何故そうしてしたのかと言うことすら…

ほんの1%も・・・

黒々とした鏡のような池面を 小さなカイツブリがゆっくりと横切ると 街灯の明かりに照らされた細波が白々と浮き上がり黒い池に溶けていく。 樹上から響く無数の虫達の声に 鼓膜が痺れてくらくらとした浮遊感に襲われた。 虫たちの奏でる涼やかな音は様々に混…

夏と秋の狭間

開いたままの窓からオルガンが聞こえた。 日曜日。 いつもお昼の時間はあまり窓際にいないので気づかなかったのか、それとも今日が特別なのか。 硝子から差し込んだ光が辺りのものを温めていくような・・・そんな優しい音が聞こえる。 きっとご近所の小さな…

ミミズクの糸車

半分より少し膨らんだ大きな月が浮かんでいる。 障子越しに橙色の灯りがぽっと灯っているようで、 ふと、小さな頃に読んだ昔話の冒頭部分を思い出す。 鬱蒼と木々が繁る山中。 月明かりさえ届かぬ夜道を旅人が彷徨う。 灯りを持っていてさえ、自分の足元がほ…

研ぐ

先日、お米を洗っていて思い出したのだけど お米を研ぐという言葉。 研ぐという漢字は研くと書いて「みがく」とも読む。 昔は精米の度合いが今ほど高くはないから、 お米の表面に付いたゴミを取ったり、精米し切れていないものを取るために それぞれのお米を…

秋の雨

今日は朝から雨だ。 耳を澄ませば開いた窓から大きな滴が何処かの屋根にぶつかり、 下草や竹にあたり、地面に勢いのある川を造りだしているのが聞こえる。 夏の雨ほど忙しくもなく、秋の雷雨より柔らかに。 梅雨の雨よりはいくらか強く。 耳で遊んでいると、…