2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

忘れられたもの、交わすもの

「あ・・」 その時、彼女と私の声が揃った。 座席に残された一抱えもある大きな白い布のスポーツバッグには、誰かの背中がそこにあたっていたのを示す丸い窪みがついていた。 「誰?」と、右を見た。 扉の辺りに該当者はない。 そのまま更にぐるっと後ろへ首…

街灯ともる

夜。 寒さでふと、目がさめた。 カーテンの向こうがほんのりと明るくて、透き通るような虫の声が光っている。 秋の声は薄い花弁を幾重にも重ねた花が開いていくのを息を潜めて目撃しているときに似て 音がするのにとが無いような気がする。 小さな風が窓の脇…