秋の雨

今日は朝から雨だ。
 耳を澄ませば開いた窓から大きな滴が何処かの屋根にぶつかり、
 下草や竹にあたり、地面に勢いのある川を造りだしているのが聞こえる。
 
 夏の雨ほど忙しくもなく、秋の雷雨より柔らかに。
 梅雨の雨よりはいくらか強く。



 耳で遊んでいると、どこかでトトトと雨垂れが集中しているのが聞こえる。
 雨音の中に窓を開け閉めする音が混ざり、表の道で車がサァッと通り抜けた。
 虫たちが雨の中でも歌っている。 



 窓から手を差し出すと
 滴が掌を打ち、腕を伝い、地面へと落ちる。
 滴の行方を目で辿ると
 いやに大きくなった紫陽花が、白菜のような葉を広げて気持ちよさそうに雨を受けていた。
 
 晴れの日は晴れやかに
 雨の日は穏やかに。
 
 雨の彷徨いこんでこない窓辺で雨音を聞いていると
 ふと、自分がどこかの山の洞窟で
 雨音を楽しんでいるような気がした。
 
 うつらうつらと雨音を聞き、
 ふかふかの落ち葉のベットで夢の世界に引き込まれながら。
 この雨が豊かにしていく翌年の実りを想うのだ。
 そして穏やかに、ゆっくりとまた一眠り・・・



 そんなことを想った。