朝食の起源

 熱々のイングリッシュマフィンを二つに割って、
 黄金色の蜂蜜をとろりと入れて、小麦胚芽の粉をどっさり挟んでパクリ。
 マフィンのさっくりふんわりとした感触と小麦粉の甘味、
 蜂蜜のじゅわっと広がる甘さと胚芽の香ばしさ。
 食べている間に胚芽が散るのが玉に瑕とはいえ美味しい。
 
 パクリと食べて、紅茶を一口。
 もう一度パクリ、ごくり。

 一息ついて空を見上げて、
 本日は曇天なり、台風は何処にあるや?と、
 ちょっと古めかしい言葉を頭の中で言ってみる。
 
 そういえば、台風があんなに丸いもので
 単なる嵐と違うものだと初めて気づいたのは誰なのだろう?
 ううん、丸いことは台風の目に入ればわかっても、
 普通の嵐ではないと被害を受けていた人にはわかっただろうか。
 少なくとも私には大雨の晴れ間と台風の目との違いは、空が丸く見えない限りわからない。
 今よりも天候の変化が密接に生活と結びついていたのだからわかったのではないのかな。
 どうなのだろう?
 台風が台風と呼ばれだしたのはいつ頃だろう?
 
 パンを最後まで楽しんで、紅茶でふわりといい気分。
 
 フレンチトーストの香りがふわり。
 母が食べているのを横目でちらり。
 あれも中々美味しそう。

 どんな家にも定番という朝ごはんがある。
 そして小さな決まりごとが沢山ある。
 いかにも日本の和の朝食以外では、家毎の特徴がかなりあるのではないかしら?

 トーストであれば、父がバターをせっせと塗って、脇のお皿に積み上げる。
 バターの器からざっくりと取って少し荒っぽく塗るからトーストの表面には
 大小の陥没の跡と、美味しそうなバターが溶けながら残っている。
 美味しいものは美味しくと、バターの量を気にせず塗る父のトーストは中々美味しい。

 オートミールはふつふつと、本来のものより軟らかく。
 ミルクの湖に入れて甘〜く食べる。
 
 アボカドはちょろりとお醤油を注いでスプーンで。
 オムレツにはナツメグを。
 クレープにはお砂糖を。
 
  アボカドは、母が大学時代にカリフォルニアで教えられた食べ方で
 クレープは家族旅行で食べたもの・・・ 
 
 紐解けば、それぞれに我が家の歴史と始まりが見えてくるような・・・
 和でない食事は歴史が浅く、
 どうしてそれが始まったのか、起源が意外と分かるもの。
 我が家内での食の起源も案外楽しい。