雪は降らなかった

 昨日
 雪が降る・・・かもしれない。
 と、聞いていた。
 空を覆う雲はうっすらと赤みがかってもったりとしていた。
 鮮やかな紅葉でもあったら、曇天がパッと華やかなものになるのに、
 桜の枝にはもう2〜3枚の名残しかない。
 桜を凍えさせるような細かで冷たい雨が降っていた。
 
 ふーっと息を吐いて空気を白く染める。
 30cm、40cm、どの位染められるかと遊んでいたら、
 戻ってきた空気の冷たさに気管が驚いてケンケンとむせた。
 寒くて気管から肺が痛むように感じると、
 「あぁ、冬が来たのだな」と改めて思う。

 通りすがりの店の鏡を覗くと、鼻が少し赤い。
 目元もじんわりと染まっている。

 道行く人も皆、鼻と目を赤くしている。
 寒さに
 目が痛くて、何度か瞬きをした。

 昨日は友人の家で鍋会があった。
 こたつの上に鍋を置いて、皆でつつく。
 こたつの入り口が4つで参加者6名という無言の攻防の結末は置くとして

 寒い外から入っていって、熱々の鍋を楽しむと
 「やっぱり冬っていいなぁ〜」と、なる。

 寒がりだから、寒いのは嫌なのだけど、
 鍋の中からあっつあつのお豆腐や、ぶなしめじ、白菜、葱、鶏・・・と取り出して
 楽しむ幸せとは替えられない。

 ホクホクとかハフハフとかフーフーとか、
 ハ行で始まる音に占領されるのは、他の季節では味わえない心地よさ。

 寒い方が美味しいお魚、美味しい料理、
 沢山あるから、寒がりなくせにもっと寒くなって欲しいと思うことも多い。
 寒がりレベルより食いしん坊レベルの方が高いみたい。

 そろそろ、風呂吹き大根もいいな〜鰤大根もいいなぁ、熱燗に、柳川に・・鮟鱇も・・
 鍋会の帰り、寒さに震えながらそんなことばかりつらつらと思った。

 食べた帰りに食べ物のことを思うのもどうかと思うけれど、
 私の想定メニューはどうも若くない。
 おかしいなぁ・・・