飛行機に乗り遅れたら・・・

帰国時、私たちはラスベガスの空港で意外なことに気づいた。
 家族の中で、私だけ帰国の便が違う。
 
 何故?
 どうも昨年末にパスポートの問題で出発をずらした際に、
 私の飛行機が家族達の飛行機に1時間〜2時間遅れたらしい。
 
 ラスベガスからサンフランシスコ。
 サンフランシスコから日本。
 行きも一人。帰りも一人。
 荷物は何故か両親と一緒にチェックインがされてしまったようだけど、
 1〜2時間程度なら、成田で落ち合うにしても大丈夫。。。
 と、思ったけれど・・・・・
 それが大きな間違いだった。
 
 当日、アメリカ・デンバーで寒波が発生。
 サンフランシスコへ行くための飛行機がデンバー経由だったらしく、
 ラスベガスへの到着が40分遅れ、サンフランシスコへの出発は1時間近く遅れた。
 結果、サンフランシスコへの到着は1時間10分遅れ。
 
 11時53分の飛行機に乗らなくてはいけないのに、ついた時間が33分。
 デンバーの寒さは翌日には高速道路すら閉鎖されるような寒さになったそうだが、
 海外の広い空港の中、たった20分で目的地に着かなければいけない私には、
 どんな寒波も知ったことではない。

 隣席のカナダ人の青年は、飛行機の出発まであと10分。
 20分と、10分と、で、お互い「GOOD LUCK」と言い合って、
 飛行機から外に出た瞬間に走り出す。
 
 右?左?まっすぐ?下?上?
 のんびりと、迷っている時間などない。
 瞬間的な判断が全てを決める。

 この道をまっすぐ行って・・・持ち物検査?靴を脱げ?
 そんなことをしている時間はないのに、と焦れはするけど仕方ない。
 係の人に「飛行機が行っちゃう!」とアピールして順番を飛び越える。

 早く、早く、早く・・・・
 気が急く、息が上がる、途中で確認した搭乗掲示板の時間が、
 チケットに記載されているより早くに赤い字になっているのが気に掛かる。
 
 とにかく急ぎ、ゲートへ走る。
 飛行機はゲートの向こう。
 なのに・・・・・ゲートへ続く扉が閉じている。
 
 何故?何故?何故? 
 信じたくないことに気づけない。
 ゲート脇の女性が「It’s close」と、ただそれだけを繰り返す。
 目の前に、確かに飛行機はあるのに!何故?
 と、言っても、
 「もう駄目だから身体検査ブースを出て、チェックインカウンターへ行くように」
 と、繰り返すばかり。

 今順番を繰り上げてもらって入ったばっかりなのに・・・。
 2度、3度お願いしてもゲートは開かない。
 仕方ないから行くしかない。
 
 外へと行く道すがら、急ぐ日本人らしき人に声を掛け
 「○○便ですか?」と声を掛け、事情を説明。
 チェックインカウンターへ着く頃には総勢5名。
 何故かみなさま私の後ろに・・・・。
 
 カウンターで事情を言うと、あちらの方も眉をひそめて対応に急ぐ。
 何やかやというものを、語学力もお金もない中、必死に交渉。
 乗ろうとしたのはユナイテッドで、乗ってきたのは(アメリカ国内系列)テッドの飛行機。
 
 乗るのがわかっている乗客がこれだけいるのに、系列なのに、待たなかったのはそちらのミスよ!
 と、必死で彼女に食い下がる。
 手持ちのお金で券は買えない。
 クレジットカードは持っていない。
 円安で、円は1万円で70ドルそこそこにしかならない。
 
 帰省ラッシュの真っ只中で、飛行機は満席ばかり。
 「明日かも、明後日かも」と彼女。
 「それは困るの、帰りたいの」と必死の訴え。
 泊まる事になったとしても、天候理由じゃホテル代は出せませんと、偉そうな方が出てきて話す。
 そんなことを言われても困るから、と、食い下がる。
 
 泊まる所は?どうすればいいの?と相談すると、どこも一杯だとカウンターの彼女。
 そこをなんとか、と、お願いすると、
 割引のチケットを付けて空港から車で5分のホテルを紹介してくれた。
 「個人的には、とってかわいそうだと思っているのよ」とそう言って、
 ついでに予約もしてくれた。
 チケットも、翌日のロス経由の席が取れ、遅延証明書も交渉の末書いてもらえた。

 飛行機に遅れること4時間。おじ様たちにリーダーと呼ばれていた。
 正直困った。
 積極性はともかくとして、語学力、能力、ろくな物ではない。
 
 旅行保険に入っていたことを喜びながら、
 太平洋上の両親の留守宅に電話で事情説明を吹き込んで置こうと電話付近に行くと、
 困り顔した日本人。
 英語がまるで話せないのに、デンバーから来て接続に失敗したらしい。
 話によれば、カウンターで対応してもらうことさえできずに、何時間も立ち往生中。

 「何やってるの!」と腕を掴んで航空会社のカウンターへと連れて行く。
 YES NOだけの彼女には、さすがに荷物が重すぎる。

 全てが終われば既に5時。
 お腹が減った残され6人。
 朝から何も食べていない。

 「せっかくだから、フィッシャーマンズワーフで蟹食べましょう!」
 「中心部へ行きましょう!」
 と、ホテルに荷物を置いてすぐに飛び出す。

 空腹抱えた6人は、ホテル正面の寂しいマクドナルドに見向きもせずに、
 1時間近く電車に揺られることにした。 
 「1人だったら、2人だったら、絶対そこまで行かないけれど・・・」
 「マクドナルドは淋しすぎ」
 「皆で行けば、怖くない!」
 
 わいわいわいと、半日観光。
 名物のケーブルカーに乗って記念撮影、顛末話。
 どんな時でも楽しまなくては損だから。。。

 何処のレストランが混んでる、空いてる、美味しそうと楽しく悩む。
 一人旅行の彼女も、初の海外。
 まさかサンフランシスコまで来られるとはとご満悦。
 友人同士で来ているカップル。
 50は超えても新婚みたいなラブラブカップル。
 そして我々若い者(笑)
 
 突然のトラブルも、美味しい食事でご機嫌になり、
 「まぁ良かったよ」「これも楽しい」「修学旅行みたい」と言い合いながら
 
 スターバックスへ入った瞬間、
 私達が立った今通っていた道に面したガラスに男がバンと叩きつけられた。
 後ろに立った黄色いジャンパーの男性が、アイスピックを太くしたような鋭利なナイフを
 押さえつけた男性の背中越しに振り上げている。

 !!!!!
 
 刃物の妙に滑らかな銀色が目についた。
 何も言えず、目が離せずに見ていると、ジャンパーの男性が、ガラス越しにこちらを見、
 ナイフを持った手を胸元にやり、 銀の星型のバッジを見せて
 「早く電話をしろ!」と、ジェスチャーをした。
 
 後ろの人は覆面警官。
 店内は、「911」「ポリス」と言う単語に満たされた。

 この店にはいらなければ、確実にその瞬間に脇にいた。
 のんきな暢気な日本人。誰かが刺されていたかも知れない。
 
 蟹を食べ、陽気になってスターバックスに入った私達を、
 押さえつけられた男がガラス越しにニタニタ笑う。
 麻薬でもやっているのだろうか。
 その笑い方は何か、どこか、不健全に外れている。

 グループの一人が「サンフランシスコって治安が悪いの?」と聞いてきた。
 「多分NYよりはいいと思いますけど・・・」それしか答えが返せなかった。

 何も無くてよかったものの
 いい気分も一気に覚めて、ホテルへ帰り、今度は保険会社と一交渉。
 
 聞くべきなのは
 自分は何をするべきか。
 自分の保険で何が出来るか。
 
 新年早々まるで今年を占うような・・・
 波乱万丈なれど、不幸中の幸い多しといったところ。
 
 今回の事で必要だと思ったことは
 
  1、旅行保険にはやっぱり入る
 (ホテル代などは戻ってきます。寝巻きや歯ブラシなどの購入費用も大抵込み)
  2、クレジットカードを持つこと
   (もしもの時のお金を持つ意味と、ホテル宿泊などの際の自己保証として)
   (クレジットカードの旅行保障も確認しておくこと。カードで払うと、保障されることあり)
  3、パニックにならずやるべきことを
  4、駄目でもともと、とにかく言うべきことはきちんと言う。
    (出来るかどうかは、やってみなくちゃわからない)
  5、前向きユーモア
  6、美味しいご飯

 その他
  旅行保険に関わることで
  7、レシート、領収書を個人別にしてもらう。
    (飛行機が飛んでしまったから・・・などと言うと、案外やってくれるものです)
  8、遅延証明書を忘れない
  9、ことが起こったらすぐに保険会社へ電話を掛ける
   (契約によっては電話がないと、保障期間が延長されません)
 10、国際電話でもなんでも、コインではなくカードを買うなど、形で残るものを残すべし!
 
 
  辞書と、保険のハンドブックは邪魔でもやっぱり手荷物に。
  化粧水の小さいものやメイク製品。
  可能ならば小さなシャンプーリンスも持てたらGOOD。
  何があるかはわからない。
 
  着の身着のままホテルに一泊。嫌になるのは服を替えられないことでしょう。
  保険によっては服を買っても制限以下なら保障の中に入るので、しっかりチェックをしてください。
  買っても出ない人もいます。
  海外のホテルのアイロンは電圧が高い為、小さな小物程度なら洗ってアイロン掛ければ乾きます。
  旅行中、靴下の履きっぱなしをするなんてどれだけ苦痛か・・・
  まさかの時にはお試しください。

  事態発覚後、24時間以内に電話しないと、保険が延長されない人もいる。
  保険会社によって、保障の仕方も内容も随分違う。
  私は東京海上を。
  他の方はAIUを。
  何をどれだけ買えるのか、どれだけの制限があるか。
  そんなこまこまとした大切なことが沢山違って、驚かされた。

  何も無いのが1番だけど・・・