怖さを体感できるから。

 青い空に所々白い筋が流れ、
 穏やかな陽光にぬくめられた北風が
 時折本性を剥き出しにするような冷たさを運んでくる。
 近所の公園では早くも綻んでいる桜があるらしい。
 幸い私は見ていないけれど・・・・怖い怖い。



 本来と違うときに違うものがあることに、違和感というよりも拒否感が生じる自分に
 「まだ自分は自然の中に生きている」と少し安心したりする。
 
 例えば、6月は梅雨で台風は9月。10月になれば落ち葉、11月にはコートとマフラー。
 12月から1月には霜が降り、氷が張り、雪が降る。
 
 そんな当たり前の季節の流れを自然に知ることが出来た私達の世代はまだ幸せなのかもしれない。
 
 今年、大学に平成生まれがやってくる。
 平成がはじまってもう18年が経ったのだと改めて感じて愕然とする。
 これから下の世代の人達は昭和天皇陛下の顔も知らないし、
 黒電話も使ったことの無い筈だ。
 
 私自身も、バブル時代はTVでみたことしかない世代。
 世の中は後の世代ほど知らないことが増え、先まで見ることが出来るようになっている。
 ただ、これからの世界はきっと今までならば数世代で行われるはずの変化があっという間に起こる。
 今現在、異常な日常の季節を体感してゆく子供達が大人になった時。
 私が感じている違和感を感じることが出来るのだろうか。
 レイチェル・カーソンの「沈黙の春」、有吉佐和子の「複合汚染」などを読んで
 ゾッとすることができるだろうかと考える。
 「こんなの、普通じゃない」「何かおかしいのかしら」と、
 そんな風に考える人が出てくるのではないか。
 
 今の平成生まれの最初の数世代以降は常に異常気象と言われる中で育ってきている。
 私達が子供時代に経験したよりも暑い夏を過ごし、冷房病に苦しみ、
 身の回りに緑が少ないことが普通の世代。
 
 基準となる体験をしていない人に、違和感は感じられるだろうか。
 まだ違和感を感じられる人間がいるうちに動かないと、
 危機感は薄れ、ずるずると人は滅びていくのだろう。
 今日、クーリエ(3.01/2007/p19)の中で気になる記事を見つけた。
 各国の記者が書いた雑誌や新聞の記事の中からセレクト・編集されているクーリエは
 あまり見ない視点からの記事があったりしてとても面白い。
 気になったのはロシアからの記事。
 大まかにまとめると「」のようになる。
 
 「この冬、暖冬によってモスクワでは欝やビタミンD欠乏症に陥る人が続出なのだという。
 原因は2つ。
 本来くるはずの寒波や雪が来ないことによるストレス。
 そして地球温暖化に伴う「地球暗化」で、地球に届く太陽光が減り、
 太陽光にあたることで生成されるビタミンDが生成できなくなっている。
 ということなのだそうだ。
 特にこの前者のストレスは「冬待ち症候群」と言われ、ストレスたっぷりの都会人には大打撃。
 因みに冬待ち症候群にかかった動物は神経が高ぶり、とても攻撃的になる」のだとか書いてある。
 
 私も感じている今冬への気持ち悪さこそ、「冬待ち症候群」なのかもしれない。
 ただ、ストレスが高ければ精神的に落ち着かず、攻撃的になるのは当然。
 モスクワほど厳寒な土地の違和感は確かに高いかもしれないけれど、
 暖冬ばかりに原因を求めるのはちょっと乱暴。
 経済的な問題含めどこの国も問題は積載、きっとその一因位が実際の所だろう。



 ビタミンDについては、日本の場合普段の生活をしていれば、
 窓から入ってくる光だけでも十分生成が出来ると聞いて育った。
 けれどモスクワのように冬中厚い雪雲に覆われる所にとっては、
 日光を浴びることは確かに大きな意味を持つことなのだろう。



 恥ずかしながら地球暗化という言葉はこの記事で初めて知った。
 調べてみるとその歴史は浅く2001年に世に出たそうだ。
 グローバル・ディミング(地球暗化)は
 50年代〜90年代にかけての日照が、30%も減っているという発見に名付けられた。
 細かいことはわからないのだけれど、過去50年間で1日の日照が1 時間も減っているらしい。
 原因は人間の出す排気、そしてそれに混ざった塵などだ。



 以前私は大馬鹿にもどこかで火山が噴火したら、地球が暗くなって温暖化は少し止まるだろうか。
 と、書いたことがある。



 実際にこの地球暗化減少は既にそのような効果を発しているといわれているらしい。
 火山など噴火させなくても、既に人は空を汚しているからだ。
 
 確かに、どこか大きな都市に行けば青空が青く見えないことがある。
 遠く離れて見ればやわやわとした灰色の靄が町全体をドーム型に覆っている姿を見たことがある。
 あれがあるからこそ、温暖化が食い止められているのだとしても、
 温暖化の原因はそうした排気による気温上昇や、緑の減少などなど
 排気は確かオゾン層も破壊して・・・排気の雲は酸性雨も降らせる。
 
 私達は毒を作り、毒を浴び、毒を持って毒を制している状態なのだろう。
 
 今もし、排気の雲が無くなれば温暖化は加速。
 そうでなくてもずんずん進む。
 モスクワの人たちのビタミンD欠乏の傾向は今後寒冷地に一層広まっていくことだろうし、
 本来の季節を肌で知らず、危機感を体で気づけない人もどんどん増えていくだろう。
 
 何かこのごろ環境の記事ばかりになってしまっているのだけれど、
 情けないことに怖い怖いばかりで先に進むことが出来ない。
 でも、怖さを体感できているうちに進めなければ。