核実験に思うこと

先日、北朝鮮が核実験を行ったという報道があった。
 その時ふと、テポドン2号が腐食していたのではないかという報道があったことを思い出した。
 発射までに時間をかけすぎて燃料が悪くなったはずだというのが、
 米国国防総省の科学委員会の見解で流されていた。
 
 私には、テポドンの仕組みだとか使われる燃料の使用上注意なんてさっぱり分からないけれど
 「使うべきときに使うべきものを使えなかった」というのが本当ならば
 管理体制の面で大きな不安のある国だというイメージが大きくなる。
 腐食のために発射が失敗して
 日本へ被害が及ばなかったのならそれはこちらにとって僥倖というべき事なのだけど、
 それがテポドン2号の失敗原因だとするなら、
 そんな国が核実験を行うことは実験に失敗する日が確実に、至近にあることを意味する。
 
 人は目に見えない病気を恐れ、ダイオキシンを恐れ、放射能を恐れる。
 
 広島や長崎にもたらされた目に見える核爆弾の恐ろしさは、
 直に知らない私でも身震いするほど怖ろしい。



 核がもたらす怖さは
 爆弾の形になったものと、目に見えないものとの2つだ。
 
 爆弾・爆発もなく放射能が実験施設から漏れたとき、
 測定器を持たない私たちには気づくことが出来ない。
 
 草は、それまでと同様に育つだろうし、
 私たちはいつもどおり会話して日々を過ごし、
 太陽も月もそれまでと同様な大地を照らすのだろう。
 ・・・・表向きは。



 私自身は行ったことはないが、
 チェルノブイリの跡地に住む人々の話はTVや雑誌などで目にすることがある。
 今も自然界における放射能量を遥かに越える立ち入り禁止区域に、
 チェルノブイリの事故の際に住んでいた人々が村を作っているのだ。
 
 事故後は人間に狩られることが減り大幅に動物たちの生息数が増えた森、
 穏やかな陽光の中を目を細めて歩く優しげな方々の面差し。
 事故に遭う前に営んでいたように畑を耕し笑う人々の姿からは
 一見放射能汚染の姿は感じられない。
 
 しかし、一枚服をめくれば体の様々な場所に打撲傷のような腫れがある。
 様々な病気や障害。
 現代医学では対処できないような痛みや病の数々を服の下に隠して
 彼らは日常をくらしているのだ。
 
 新しく生まれてくる鳥の雛も、早死にするものがいる。
 奇形で生まれるものもいる。
 普通の日常が目に見えない何かに汚染されているのだ。



 村の人達にとって、
 目に見えない放射能で害された事毎は放射能のせいだと分かっていても
 歳を取る一般的な暮らしの中で得る痛みと同じように受け止められているのではないかと思えた。
 放射能は味があるわけでも匂いがあるわけでもないのに、
 人々の中に染みこみ蓄積されていくのだ。
 
 北朝鮮と言う国は金総書記を頂点とした社会で少数の特権階級者を多数の国民が支えている。
 ある意味、蟻達の世界のようでもある。
 自分の巣穴やパートナーを決める女王蟻と働き蟻の世界だ。
 女王蟻は働き蟻が幾匹死のうと、新しい働き蟻を産み、また外へと送り出す。
 
 人間を蟻にたとえるのも失礼だが、
 北朝鮮と言う国にとってはたとえ核実験で国民が知らず汚染されて亡くなってしまうことになっても
 国の先行きに人の命がなんの重石にもならないのではないかと思えてしまう。
 だから国の意思を決定する際に挙げる条件が私達の国とは違うのではないだろうかと。
 私達の国だって、事によったら人命よりも国を優先ということはあるかもしれない。
 しかし、それも程度問題だ。



 北朝鮮の実験施設から
 放射能がじわじわと北朝鮮・韓国・日本海・日本と汚染していったところで
 北朝鮮の上層部さえ残れば彼らはそれ以上の対処を実験施設にしないのだはないだろうか。
 国民が放射能に害されてもきちんと手当てをしないのではないだろうか。
 
 共産主義は一つの理想的な考えではあるけれど
 人間が欲を持つものであるかぎり
 必ず理想どおりになることがない。
 共産の考えであれば弱者は救済されるべきだけれど
 強者は搾取されるべきだけれど
 実態はなんとも乖離している。



 そんな国に実験を中止するように言っても(言うこと自体は勿論重要なのだけど)
 まず聞かないのではないかと思う。
 自国民に対しても対処する気が殆ど無いような国にとって、
 既に国連で嫌われているのだし、実験を中止することのメリットは無いのではないだろうか。
 逆に彼らにとってのデメリットは多い。



 北朝鮮・ロシア・中国・日本・アメリカ・・韓国
 それぞれの国と国の間の緊張感が高まっていて
 戦争の足音が聞こえるようで怖ろしい。



 この緊張状態はどうしたら解消できるだろうか。



 例えばロシアの、アメリカの、日本の首相や大統領がいなくなったところで
 それぞれの政府はあまりにも体制として完成されているため
 一度つけた道筋が訂正されることは、主長が変わったところで早々出来るものではないのだろう。
 北朝鮮も敵がいなくなったと開放的になってしまうだろう。



 では、北朝鮮はどうだろう。
 一番上の彼がいなくなったら、政治は、国際情勢はどう変わるだろう。
 変わってくれるだろうか。
 いなくなったのを好機とアメリカが介入して戦争状態になるだろうか、
 同じ共産主義だからと中国が取るだろうか。
 やはりロシアか。。。?
 
 そんなことを考えていると北朝鮮についてさっぱり分からないことに気づく。
 テレビのニュースなどではよく誰が後継者で、奥さんがどうとかと話をしているけれど
 実際の後継者はどんな人で、国際情勢の中でどう感じているのか。
 彼が上に立ったときはどうしようと思っているのか。
 それを支える人々はどう考えて動くだろうか?
 今のような緊張状態が堅持されていくのだろうか?



 そんなことを考える
 
 日本に放射能汚染がやってきた時、
 日本政府はどう考え、調査し、国民に対応するのだろうか。
 私は何を食べ、どう生きるだろうか。