北へ行くのだ

 空はスカッと晴れやかで、夏の倍ほど高くにあって、
 陽射しはキラキラと葉を輝かせ、
 風はあたたかに気持ちよく、5月のような陽気でも
 空気は季節に違わずカラリと乾き、風邪引きさんがあちらもこちらも。
 
 3連休で遊びすぎたのか。
 それともゆっくりし過ぎたためか。
 電車に乗ってもコンコン、歩いていてもコンコン。
 そっと咳き込む声がする。
 最近、咳をする時に手で覆ってくれない人が増えたので
 複雑な気持ちで心もち体を分からない位にそっと斜めにずらす。
 今週末は、北端の動物園に行って来るのだ。
 温泉に行って来るのだ。



 風邪を引くわけにはいかない。



 普段なら「私が風邪をもらうわけがない」と決め付けて(内心で、抵抗するのは大切です)
 泰然自若としているものの、旅行前ではそうはいかない。
 何しろ私は寒さに弱い。
 体調を崩しでもしたら元も子もない。
 「困ったな」と思いながらも頭の中は着膨れプランが進行中。
 あの服がいいか・・・この服が良いか・・・
 動きやすくて・・暖かくて・・・スキーウェアを持っていくのはあんまりだろうか・・・ 
 そんなことばかりを思っているけれど、旅立つ日は目の前だ。



 大好きな友人と久々の旅行。
 温泉に行って、紅葉を見て、動物園を、そして何より時間の制約もなく話をするのだ。
 夜を徹して。
 白熊が良いとか、ペンギンの行進がいいとか
 オランウータンの綱渡りとか・・・・
 様々に、良い噂ばかり聞くのだけれど、
 今回の旅はツアー。
 動物園に割かれているのは午前中の2時間のみ。
 
 どこに行くのが一番ベストか・・・。
 もぐもぐタイムをチェック。
 先日上場したミクシーのコミュニティーで、
 動物園くらぶの焼きたてパンが美味しいという情報をチェック。
 名前に「山」が付くだけあって園内は坂だらけ。
 一部の来園者に心臓破りの動物園と呼ばれているのを知って自分の体力を省みてぎくり。
 1日の寒暖が15度も違ったりするというのを聞いて、荷物をまた出しては詰める。
 来週で夏期営業が終了と言うのを読んで、駆け込みの人達が多いのではと心配したり。
 
 要は行ってみなくてはわからない。
 けれども制限時間有り。
 友人とはどれだけヒーヒー、ハーハー息を切らせることになるやら
 怖ろしいやら楽しみやら。
 丑三つ時に準備をしながらにんまり笑う。
 
 初めて北の海峡を越える。
 別の友人が「あそこは海外みたいよ、広いわよ、感動するわよ♪」と教えてくれる。
 彼女の味わった感動が、電話を通してこちらに伝わり
 心が一層躍りだす。
 
 「海外」、「海外」、海を越えることが海外ならば、
 あちらの大地も同じ日本の中の海外なのだ。
 どんな出会いが、どんな場所が、どんな瞬間、空気、色、
 大好きな友人と、どんなものに触れ合えるのかそれがとっても楽しみで仕方ない。
 
 私は今週一杯風邪を引く気が毛頭も無い。