金魚

東京も、中々な暑さが続いている。
 現在、室内温度35.5度。
 朝方水をやったベランダの植物がげんなりと、息も絶え絶えの様子。
 昼に水をやると熱湯になってしまうから良くないとは言うけれど
 ・・・ほんとうに水をやらなくてもいいんだろうか。
 
 室内は幾らか風があることが救いだけれど、
 のんびりパソコンの前へいられる気もしない。
 かと言ってクーラーは得意ではない。
 30度超えが珍しかった頃ならともかく、
 この環境は人間の好ましからざる生息環境であるのに間違いはない。
 書きたいことは様々あるのに、この暑さ。
 思考能力がぎゅるぎゅると搾り取られていくような気がする。
 
 先日、知り合いと金魚亭レストランに行った。
 本郷の駅から徒歩5分。
 伝統ある、金魚屋さんがやってる店だ。



 裏へ回ると、15mプールほどの生簀(?)と、水槽の群れ。
 リュウキンやランチュウ、出目金や和金。
 名も知らぬ様々金魚たちが、水槽の中で泳いでいる。



 水槽の中には、まるで錦鯉のような頭でっかちもいれば、
 息をするたびにぷくっぷっくっとピンポン玉のように膨らむ可愛いのがいる。
 15mプールの上に渡された板をギシギシとさせながら下を覗くと
 仕切られた中に
 唐辛子のように鮮やかな丹の色をした和金。
 お祭りでみる小さな金魚が、20cmはあるような大きさになって生き生きと泳いでいる。
 見たこともないように大きな出目金。
 背びれのない、観賞用の金魚・・・
 そして雑種の不思議な金魚たち。
 
 夢中になって覗いていると、お店の方に落ちないようにと注意をされる。
 「結構みなさん落ちるんですよ」とお店の人が笑う。
 
 一匹一匹、かなりのバラエティに富む金魚たち。
 雑種のものといったら
 頭が黒の出目金、お尻がオレンジのものがいたかと思えば、逆がいる。
 オレンジと黒の虎がいたかと思えば、他の正当金魚と変わらなさそうなものもいる。
 
 なんで、これも雑種なのかと訊ねると、
 「これは、尻尾が鮒尾なんです」と教えてくれる。
 フナの尾は二股。
 金魚は和金以外はほとんど三股。



 金魚は元々フナの変異種で、和金からどんどん改良されて、
 和金以外の尾っぽはほとんど三股であるようだ。



 ゆったりと泳ぐ金魚の間を、白と黒とピンクのめだかがスイスイ泳ぐ。
 「めだかは跳ねて、敷居を越えちゃうんですよ」と、
 お店の人は仕方ないなというように笑った。
 
 夏を過ぎ、秋を過ぎても、金魚屋さんは金魚を商う。
 江戸からずっと300年以上の時を経て、これからも、きっとずっと。
 涼やかな金魚を一枚。
 残暑見舞いに皆様へ。
 
 金魚坂の金魚屋さんにて