そんな月夜でありました

 昨日、御茶の水の駅の脇を通った。
 石造りの橋から、眼下に神田川を楽しみJRのホームを右手に見下ろす。
 知り合いと、気持ちよく楽しくお酒と話を楽しんだ帰り道。
 駅は明るいけれど、オフィスビルの上層階を使っている人達はみんな帰っている時間。
 地上は明るく夜は夜らしく。
 冴え冴えとしたまぁるいお月様が、ぽんと浮いている。



 少し向こうにある小さな鉄橋のような橋のあたりを
 左から右に、銀の車体に赤い線が一本引かれた電車が抜けていく。
 手前から、オレンジの中央線が進んでいく。
 神田川がホームの光を浴びて、ちらちらと川面を白く光らせている。
 電車が上と下とのレールに乗って、駆け抜けていく。



 橋の左側にカップルが。
 真ん中に私が。
 右端に会社員らしいスーツの男性の二人組が陣取って
 みんな月を見ていた。



 左端の白いスカートをはいた女性が
 「見てみて、月が綺麗!」と彼に指差すと
 彼は可愛くて仕方ないという感じで
 ポンポンと彼女の栗色の頭を撫でていた。
 
 右端の方々は、まだまだ暑いというのにスーツのまま肩を組んで
 「いいなぁ」「いいなぁ」にこにことそればかり言って月を楽しんでいた。
 
 私達の後ろを、何十人もの人が次から次に通っていく。
 沢山の靴音が背中で響く。
 けれど、こんなに綺麗な月夜の晩に立ち止まる人は案外少ない。
 それとも多いと言うのでしょうか?
 
 長梅雨で、あまり夏を実感しないでいるうちに
 秋が、もうすぐそこに来ているのだと
 そんな月夜でありました。