眠れない夜、迎える朝

 妙に、寝付けない夜がある。
 寒いわけでも、暑いわけでも、
 まして眠れないほどはっきりした不安があるわけでもない。
 
 冷え性傾向があるから、
 足先の違和感で目覚めることもあるのだけれどそうでない。
 お酒を飲むと目が冴えてしまう癖もあるのだけれど、そんなわけでもない。
 
 本来が寝つきの良いほうだから
 眠れない夜はとても不自然な気がして
 ベッドの中で落ち着くベストポイントをごろごろしながら捜したり
 腹筋をして体を疲れさせたりしている。
 
 けれど、眠れないときは所詮眠れないもので
 憮然としながら本を読んだり考え事をしたりしている。
 眠れないときにはミルクが良いと聞いたものの、なんとなく深夜に飲む気になれない。



 気がついたら集中して朝まで起きていたなんていう時の体は現金で、
 不思議と翌日もいくらか元気なものなのに、
 どうにも眠れなかった夜の翌日は一日中だるんとした倦怠感が付きまとう。
 眠れない夜の読書も、上滑りするような集中力しか発揮できないのに
 翌日までそんな思いをするのはどうも癪に触る。
 が、どう足掻いても眠れないのだから諦めるほかがない。



 ぶつくさと考えながら、起きていると
 ポストに新聞屋さんが新聞を落とす音がした。
 そそくさと、まだ誰も読まない新聞を取りに行く。
 明日から8月とは言え、4時ではまだ夜は明けない。
 
 今頃、太陽はどこに朝を運んでいるのだろうか。
 東から西。
 ハワイはとっくに、過ぎたのだろう。
 グアムはどうか?
 太平洋のどの辺りに、今、朝が来ているのだろう。
 海の側へ行くと、朝日が昇る瞬間の鮮やかな光が海を渡ってくるのが見える。
 海のど真ん中にいたら、水平線から昇る暁の光の境目。
 夜と朝の境目がすっぱりと見えるのかしら?
 なんといっても地球は丸い球体のようなのだから。
 カーテンの隙間から東の空を見ながら思う。



 折角の、珍しい朝の日だ。
 日頃、こんなに早く起きられることはめったにあることじゃない。
 早起きをした人を気取って散歩とでも洒落込んでみようかな。
 帰ってきて二度寝をしたら、どう考えても朝寝坊になる予感。



 眠れずに迎える朝は悩ましい