落雷

 
 瞬間。
 近所の駐車場から3,4m上空で白い球状の光が破裂した。
 ヒッ!と、息が止まって
 腕を体に引き寄せた。
 家の電気が全て消え、
 置いてあった電話の子機からはツーツーと回線が途絶えた音が漏れた。
 手の表面、体のあちこちが少しぴりぴりとする。



 体中から、汗が吹き出たのが妙にはっきりと感じられた。
 急に上がった鼓動を無理やり抑えながら、電話の子機の電源を押す。
 2度、3度と押してやっと電源が切れた。
 ギュッと強張った肩を無理やりほぐす。
 コードを全てはずしたまま、パソコンの電源が入るか確認をする。
 
 ギクシャクとしながら唾を飲み込むと
 口の中がひどくからからになっているのがわかった。
 大きく息を吐き出すと、
 蛍光灯が軽い金属的な音をさせながら次々に灯った。
 
 雷は怖い、けれど雷は好きだ。
 自分なんかより圧倒的に大きくて、強くて
 ぶつかったらあっという間に死んでしまう。
 それなのに、どうしてか惹かれてしまう。



 けれど今日のように電気量が有り余っているような雷は本当に怖い。
 グワラグワラと音が動くたび、家がジンジンと振動する。
 窓が揺れる、扉が揺れる、全てがズンズンと一緒に揺れる。
 ガラガラと頭上で音が響くたび、
 龍の姿を考える。
 
 あの雲の上に、
 少し動くだけで地上にこれだけの振動を寄せるような巨大な生き物がいる。
 そう思うとガラガラと鳴る音がまるでリュウの鱗が擦れ合って出てくるもののような気がする。
 実際にそんな生き物が本当にいるようで
 小さく開けた窓の間から吹き込む雨に濡れながら、雲を見上げた。



 夕立は行き
 雷は去った。
 足と手が、若干まだぴりぴりと痺れている。