そんな気がする朝だった

 
 さらさらという音も立てずに雨が降る。
 樹木を濡らし、ふんわりと土の匂いが辺りに立ち込める。
 空は、霧を幾重にも重ねたように白く曇り
 そこから、水滴とも言えない様な細かな雨が落ちてくる。
 雨雲というには白い空は
 なんとなく現実感がなくて、
 白い建物越しに見ると地面との境目が曖昧に感じる。

 雨は
 音もなく葉に雫を含ませ、
 葉脈を伝って小さな滴に変わるとトトトトと軽やかな音を立てる。
 雨の日の緑は一層鮮やかに深い。
 どうして雨が降るとそう思うのか。
 
 烏が、枝で嘴をこすって去っていった。
 カァの一声の挨拶も無い。
 音も無いような雨の音ばかりが辺りに染みる。

 ふと、数日前に見た晴れ間の青を思い出す。
 雨に濡れ、一層青々とする緑を見つめる。
 そうして、「碧」って良い言葉だなと考える。

 雨に青空の青が溶け、
 葉っぱに触れて緑に変わる。
 そんな私の思いを「碧」という言葉が代弁してくれているよう。

 青でもあり、緑でもあり。
 空気のように細やかな雨だからこそ
 木々は呼吸でもするように色を転化して吸収しているのじゃないか。
 そんな気がする朝だった。
  
 寝坊すけだから
 朝はとても弱いけど
 欠伸しながら
 雨に包まれ
 ぼんやりとする
 朝は好き