呑まれないでお酒を飲もう!

 チンと触れそうで触れないでグラスが重なる。
 スパークリングワインのうっすらと黄色がかった影がテーブルに落ちる。
 キールロワイヤルの赤が交差する。
 ふふふと小さく笑みを浮かべてこくりと飲んだ。

 色がそれぞれ重なるごとに、
 色がそれぞれ無くなるごとに、
 私達はクスクス笑う。
 
 1週間に1度、2度は会っているか電話している
 気の置けない間柄。
 お酒については私が強い力関係。
 お酒を飲めば赤くなるとの友人の為、
 もう一人の友人を待っている間に
 「どうしたら、呑まれないか」のレクチャー開始。
 
 基本は1杯、又は半杯の友人が
 赤くならない為には一体どうすればいいのか?
 問題点を考える。
 まず第一に
 一口に含む量のこと。
 
 弱いから、口の中で転がさず飲んでしまおうという友人。
 その真面目さも、彼女の素敵な魅力の一つ。
 でも、
 転がさないから、一口の量が増えているのじゃないかと仮定を立てる。
 
 ワインはともかく、
 シャンパン系は飲み口も良い。
 回り易い。
 啄ばむように、つっと柄を上げつっと下げ。
 のめる方はそのまま少し長く持ち上げ。
 飲めない人はつっつ、つっつと
 小刻みに飲む方が良い。

 お喋りを楽しみながらの息継ぎに
 飲むより少なく
 舐めるよりはちょっぴり多めに。
 唇閉じて、にっこり笑って、ほんの僅かに開いた隙間に
 すっ、すっ、すっと流し込んでいくのが一番良いと私は思う。
 
 息を吸っては吐いて
 自分の中に回るお酒を意識しながら
 ちょっぴりちょっぴり舌の先で味わいながら。

 口に入れるときはこくりと飲んで見えるように。
 実態はこくり未満に飲むように。
 
 私も前は全く飲めなかったから、
 ご飯に合わせて飲みたい気持ちもよくわかる。
 飲めるようになってからは、飲む楽しさがよりわかる。
 
 どうしたら、綺麗に飲めて
 呑まれないのか。
 
 もう一人の友人がやってくるまで二人で練習。
  
 「腕は、こうした方がいいんじゃない?」
 「こっちの角度のほうが合っているかな?」
 「この位上げたほうがいいのかな?」

 「こう?」
 「ううん、こうよ、こう」
 「口は開けずに、にっこりね」
 「鏡が欲しいわ」
 「本当ね」
 
 女同士、勉強(?)には余念無し!
 色々と、考えることはあるのです。
 
 マナー本にも書いてない
 適量を保つ為の飲み方講座。
 
 練習しすぎて、メンバーが3人になる頃には
 友人の頬がほんのりピンクに染まった。
 今度3人で食事の時にはみんなでどんな飲み方をしているのかな。
 
 後から来た友人がミモザを頼んで、
 机に落ちる3原色は黄色・赤に、華やぐオレンジ。
 
 次に会うのはいつかしら?
 おかしいな、かなり頻繁に会っているのに待ち遠し。