シンシアさんの魅力

 母が、やけに喜んでいる。
 今日、北海道からシンシアさんが到着したのだ。
 フランス生まれの小柄なシンシアさんは、ジャガイモさんだ。

 バターを絡めて焼いたりすると、ほっくりごっくり。
 メークイーンのような舌触りと、
 お芋のうまみがきゅっとつまってホクホクとして堪らない。
 どんな人が名付けたのか知らないけれど、
 元の名前がついたシンシアさんはとっても素敵な人であったに違いない!

 先日、母と食事に行って出会ったシンシアさん。
 あんまり美味しいので、食べた瞬間パッチリと目が開く。
 母と思わず顔を見合す。

 「美味しいね」
 「美味しいね」

 美味しいものは、とっても素敵。
 ヨーロッパで食べた味と似ていると母が言うと、フランスの種だとお店の人が胸を張る。
 どこでどんな風に作っているのかと、つい矢継ぎ早に聞いてしまう。
 母と私とお喋り親子。
 あんまり美味しいと言っていたからか?
 店長さんが、こっそりシンシアさんの入手先を教えてくれた。
 紹介先に特別電話を掛けてくれるお約束と一緒に。
 ジンギスカンは美味しかったけれど、私たち親子の頭の中はシンシアさんのことばかり。
 
 少量生産のため、小売は本来していないそうなのだけど、
 特別に分けてもらったシンシアさん。
 
 焼くのか、煮るのか、蒸すか、揚げるか・・・
 思うだけでも
 思わずうきうきどきどき止まらない。
 考えながら、にまりにまりと笑うので、どこから見ても変な人。
 準備も何も、始める前から
 ああだこうだと楽しみばかりが広がっていく。
 割り当ては、誰がどれだけ食べるものだか。

 どんなに美味しいお芋でも、お腹の膨れるお芋のことだし
 一人が食べれる量はたかが知れてる。

 それでもどうでも、
 あんまり美味しかったものだから
 頭の中でシンシアさんの割り当て分を皮算用。
 
 シンシアさんの魅力が悪い。
 食いしん坊は、つい浮き浮きと
 シンシアさんのこれからの行く末を考える。