さあさあ、春がやってくる!

 強い風に押されて
 雨粒がバラバラと小石のような音を立てている。
 窓の側にいると
 雨粒が思っている以上に大きな音を立ててぶつかってきてドキリとさせられる。
 大粒の雨は窓ガラスにぶつかって幾筋もの流れをつくって落ちていく。
 
 天気予報によれば明日、
 近畿以東は雷雨の可能性があるのだとか。
 
 春雷の季節。
 春の雷は遠くでごろごろ鳴りながら、どこへ行くのかわからない。
 春の芽吹きのエネルギーが嵐の中にも充満しているような気がする。
 もっと強く、もっともっと成長しなくちゃいけないと
 地球が、大地を促し、空気をかき回して
 動植物に明日のエネルギーを放出するよう呼びかけているような気がする。
 呼びかけられているような気がする。
 
 春に、滞ってなどいられない。
 自分の中から外から
 季節に促されるように、季節を促しているように
 とっくに何かは始まっている。
 
 今日、大好きな辛夷の花を見かけた。
 木蓮の花も咲きかけていた。
 満開にはまだ遠いけれども、梅、桃の後、染井吉野の前のお楽しみ。
 千里も香る沈丁花の香りの中で白いふっくらとした蕾が膨らむ。
 早咲きの桜がもう咲いている。
 染井吉野の茶色い花芽が、遠目で見るとうっすらと紅がさしている。
 枝先が、風に煽られるたび、枝の周りが茶色い桜色に染まる。
 花弁が開くその前に、すでに桜の色が芽生えてる。
 楓の冬芽が、先から鮮やかな色を覗かせている。
 
 桜も楓も名を知らない多くの草木も
 その枝先に、その葉の先にしっかりと春を蓄えている。
 
 冬に、花屋の花を見る。
 寒さの厳しい空気の中で、花の周りだけ空気が違う。
 冬の寒さの中で、季節の違和感に目が吸い寄せられて
 まだこない春を願った。
 今はもう、花屋を見ても季節の違和感を感じない。
 冬の名残が残る今だけど。
 だれがなんと言っても春だから。

 季節の変化を体感させるのは何でしょう?
 空気でしょうか、日差しでしょうか?
 それとも地球の磁石の関係でしょうか?
 
 それがなんだかわからないけど
 
 春雷が来る。
 寒冷前線が去っていく。
 そうして
 だれも文句がつけられない
 正真正銘の春が来る。