雪が降っている地域に

 日本中で雪が降っている。
 東京には降っていない。

 東京で雪が降れば、電車は止まる。
 急行や特急が無くなり、ダイヤはあってない。
 東京を走るドライバー達は雪道の運転に慣れていないから
 荷物を走るトラックと、チェーンをつけた乗用車が
 渋滞とはいえない道を雪煙を上げてゆく。
 高速道路は凍結で進入が禁止され、
 車は背中を丸めて歩く人の脇をのろのろと走ったかと思うと雪交じりの泥を撒き散らす。

 東京に住んでいる人は、雪への備えが殆ど無い。
 雪の日に足元を覗くと、
 水の染みるスニーカーやミュールが寒さで真っ赤になった足に履かれている。
 他の地方に住んでいる人に比べたら、東京は雪で苦しむことが殆ど無い。
 最近は年に1〜3回ほどしか降らないから、どうしても備えない。
 まして、一人暮らしの人が多いのだ。
 そこまで考えていられない。
 
 だから、東京の雪の日の風景は中々変わらない。

 基本的に、東京に降る雪は
 降るといっても積もってせいぜい30cm。
 1日雪かきをすれば、後は名残の雪が消えるのを待つばかり。
 
 雪で人が亡くなることはまず無いし
 (停電などは別だけど)
 雪の重みで家が壊れるなんてこともない。
 (壊れるとしたら、強度偽装があったに違いない)
 
 他の地方でも勿論、そんなことはめったにない筈のことなのだろうけれど
 この冬はNEWSで随分そんな話題が流れる。
 雪で、もう57名もの方が亡くなっているという。
 
 57名。
 57というのは数字だ。 
 イラクでテロが、落盤事故が、爆発が、感染が・・・
 様々なニュースの中で人はただ数字として表される。
 でも、57の向こうに57通りの名前がある。
 ニュースに出てくる数字はただの数字ではない。
 
 多くの人が、
 雪の処分が出来ないことでの弊害で亡くなっている。
 雪を掻いても捨てる場所がない。
 雪を下ろしたくても体力が無い。お金が無い。
 
 こんな時こそボランティアが必要なのだろう。
 こんな時こそ募金が必要なのじゃないか。
 ただ国が行うのではなく・・・・
 
 TVの前で、「あのお爺さんよりは自分の方が力がありそうだ」と思う。
 ほんの少しでも、役に立てたらと思う。
 でも・・私は臆病で
 あの寒さの中では、確実に肺炎になってしまうと考えてしまう。
 東京でさえ霜焼けになってしまう私は、あそこまで行く気になれない。
 
 1回の雪下ろしに約9000円掛かる。
 あれだけ大量の雪が毎日毎日降り積もったら、雪下ろしをせずに今冬は越せない。
 1㎡に軽く積もった雪=100キロ
 それが1m積もれば・・・・・・・・
 
 これは地震のように1度に目に見える災害ではない。
 けれど明らかに普段どおりの冬ではない。
 どこか安心できる機関で、早く募金専用ダイヤルでも出来ないだろうか。
 そんな大金はとても無理だけど
 ほんの少しづつでも集まれば大きい。
 日本は募金が集まりにくい国だとは言うけれど、同じ国で起こっていることなのだから
 なんとか、どうにか、すこしでもできないのかな
 
 今、私に出来ることって何だろう。