寒いので、手を擦り合わせ、軽く息を掛ける。
 温かくなるかな?と、2、3度軽く打ち合わせたら良い音がした。
 柏手の音のように気持ちよく響いて、背筋がピリッと引き締まるような気がする。
 今年もあと2日。
 今日が過ぎればたった1日。

 数日前、友人と浅草へ行った。
 参道では甘酒が・・・揚げ饅頭が・・焼き立てのおせんべいや、人形焼の香りが、
 側を通る人を手繰り寄せていた。
 沢山の鳩が行き交う浅草寺境内の裏へ回ると
 お正月飾りの店が忙しく設営の準備中。

 今頃、あの辺りは正月商戦真っ只中。
 縁起の良いの飾り物のこと、
 手や指での3本締めや1本締めでにぎわっている筈。
 「いよぉ〜!」という掛け声と共に〆てもらうのは、
 ゾクゾクするくらいに気持ち良い。
 
 あの1本締めや3本締めをするとき、
 私はふと神様っているんだろうなと思う。
 誰かと音を合わせて、パッと止める。
 音を合わせる興奮と、止めたことで生まれる静かな強さに胸が高鳴る。
 それが神様というか・・・なにか大事なもので、
 締めることで、忽然とそれが生まれてくるような気がする。
 八百万のどの神様かわからない。
 名前の無い神様かも知らないけれど。 
  
 私達の世代は、お酒を飲んでもそうして締めることはない。
 手を叩くことがあっても、普通の拍手や手拍子だけ。
 それが少し淋しい。

 柏手での締めは、商談の成立や、お祝いの時、争いごとの終わりなんかによく使われている。
 あれはきっと、お互いの要求が整ったことを喜ぶ気持ちだけじゃなく、
 
 一緒に叩くことでその約束事を同じ気持ちで行うこと。
 叩くことで約束を神様に祝福してもらうこと。
 そして、守られるために見守ってもらうこと。
 お互いが角突き合っていたものを、終わらせること。
 互いの争う気持ちを拭い去ってもらうためのもの。
 争いごとを預けて、新しい気持ちに切り替える区切りのもの。

 締めるというのは人にとって、とても大切な文化なのだと思う。
 そういえば、乾杯の後にグラスを床に打ち付けて割る所もあったような・・・。