選択肢を作る人たち

 坂の上から見上げると
 ふっくらとした月が見えた。
 地上は寒いのに、今日の月は暖かそうなオレンジ色。
 やわやわとした煙のような雲の合間から丸い姿が覗いている。
 あんまり穏やかな色をしているから、
 立ち止まって雲の掛からない姿が見たいと思う。

 少しだけ、と思って立ち止まったのに
 なかなか影のない姿が見られないで思ったより長い時間、坂の上にいたらしい。
 ふと気がつくと、犬をつれたおじさまと
 ウォーキング中のおばさまも月を見上げていた。

 月が綺麗な日は寒いと天気予報の方が言っていた。
 確かに。

 明日はもっと寒くなるのだそう。

 昨日より今日。
 今日より明日と寒くなる。
 霜柱が立つ日も、そう遠くはないかもしれない。

 今日、ブッシュさんが日本を去った。
 ニュースを見ていたら、
 しばらく前に早稲田大学へ行ったときに見た看板文句を思い出した。
 
 新しく移設される米軍基地の中に
 日本の自衛隊の緊急時(かな?)の司令部が設置される。
 そんなことが書かれていた。
 基地のこと自体私には納得いかないことが多いのだけど、
 この話ってあまり大きく取り上げられていないのが怖いと思う。
 
 何かあったとき、日本の情報は全てアメリカに握られ、
 その行動の指図も結局はアメリカのものになる。
 そんな風にも受け取れる。
 それは多くの人が知らなくていい情報なのかな?

 基地に関しての情報って、溢れているようで結構ない。
 情報があるようで、実はない。
 これは非常に怖いと思う。

 友人が、自衛隊に勤めている。
 イラク自衛隊が派遣されるとなった時。
 新聞に多くの自衛隊員がイラク派遣を望んでいるとアンケート結果が出ていた。
 
 自衛隊でアンケート用紙が配られた時のことを聞いたことがある。
 なんて答えたの?とか
 どんな質問だったの?って。

 そうしたら・・・・
 確かに派遣を望む。
 つまり他の国の役にたちたいという人は多かったらしいけれど、
 派遣に応じたくないという選択肢はなかったらしい。
 
 はっきり覚えてはいないのだけど
 選択肢は
 「是非行きたい」
 「行きたい」
 「機会があれば行きたい」
 「気が進まない」
 確かこんな感じ。

 実際はもう少しソフトな表現で、細かく、
 「イラクがどうこう、PKOがどうこう」と書いてあったけれど大体そんな風。
 
 要は「行かない」という選択肢がなかった。
 イラクに行きたくないという人が多かったら上層部は困ったのだろうけれど
 結果しか聞くことの出来ない私達には
 「アンケートをした」と聞くだけで少し安心してしまう所がある。
 PKOについて討論しながらも、
 行った人たちについて「行きたいとアンケートで書いていたし」
 と、少し思ったりはしなかったでしょうか。

 あの時、アンケートの中に「行かない・拒否したい」という選択肢がなかったことを
 知っていた人は少ないのじゃないかな。

 選択肢って実は怖い。
 アンケート・選択肢と聞けば
 答えるほうはまるで自由に意思表示を出来るような気もする。
 でも、選択肢を作る人の意志が偏っていれば、
 不自由な回答をするしかできない。
  
 それなのに
 アンケートは選択肢の自由・不自由関わりなく、
 その回答(結果)だけが権威を持つことが多い。
 結果だけ見ていたらどんな選択肢の中で選んだか分からないのにね。 

 それが
 商品のイメージに対するアンケートかなにかならば、
 消費者もいくらかはそんなカラクリがあるのじゃないかって心づもりがもてる。
 
 でも・・・国って公平なイメージがありますよね。なんとなく。
 国だって自分のやりたいことを勧めたいのだからそうも言っていられない所が
 あるのでしょうけど。
 
 私は友人に自衛隊でのアンケートのことを聞いてからは、
 いつもそのことが頭のどこかでちらちら。
 
 しばらく前から
 憲法改正憲法改正!と叫ばれているけれど・・・
 もし、国民投票をするとして・・・
 「どんな選択肢」になるのか?
 「どんな人が」選択肢を決めるのか?
 それがとても気になる。

 国民全部での投票だ。
 選択肢は決して多くされないと思う。
 
 例えば
 ・変える
 ・変えない
 ・一部のみを変える

 という選択肢だったら?

 ・第9条などを変える

 とか「など」で括られた部分が分からなかったら?
 やたらと細かい字で書かれて老眼の人にはわからないようになったら?
 大まかに賛成だけど部分的に変えるのは・・とか
 細かい意見はどこに行くのだろう?
 
 もちろん
 「しない」という選択肢は論外だけど
 公平で、意見を汲み取れる人が選択肢を決める立場にいなければ
 不自由感は拡大する。
 
 全員が完璧に納得する選択は無理でも
 殆どの人が納得して選択しできる選択肢を選べるようでありたいな。
 
 選択肢を作る方たちは勿論望む方へ情勢を持って行きたいと
 思われるとは思うけれど、そこの所をよ〜く考えながらやっていただけたらいいな。
 公平そうに見えて実は・・・
 なんて真っ平です!
 
 アンケートを前にどれも自分の意志と違うって悩んだことはないですか?