フランスで、もう11日が過ぎている

 昨日、友人と1年近くぶりに電話した。
 メールや手紙はしていたけれど
 なかなか電話は出来てなかった。
 
 電話の向こうから、懐かしい声が聞こえた瞬間
 なんだか妙に泣きたくなった。
 「わかる?」と聞いただけなのに、
 初めて電話を掛けたのに、
 「もしかして・・・」とわかってくれる。
 それが信じられないくらい嬉しくて。
 声が震えそうになった。

 写真付きのメール、手書きの手紙、
 連絡方法は一杯あるけど
 やっぱり本人の声が聞けると無性に嬉しい。
 言葉の選び、リズムに抑揚、返す間合い。
 普段そこまで思わないけど
 声って物凄く大きな情報を含んでる。
 知らないうちにこんなに沢山の情報を自分は判断してたんだって驚いてしまう。
 
 会えれば絶対もっと嬉しい。
 でもね
 アジアだとそんなでもないけど、
 フランスはやっぱりちょっと遠い。
 
 一時は、1ヶ月に平均24時間以上電話していた私だけれど
 国際電話はやっぱりどうにもかけづらい。
 掛けるだけじゃなく、時差があるのも気にかかる。
 一体幾らになってしまうのかと家からかけるのも不安で、
 海外には大抵公衆電話から掛けることになる。
 ちなみに公衆電話から掛けるとシンガポールで1時間約5000円。
 もっと遠いフランスは・・・長電話派の私には少々財布が痛い。

 花の都
 ファッションの都
 パリ。

 しばらく前から暴動が続いている。
 パリ郊外から始まった暴動は、中心部へと動き、
 車への放火は既に1400台を超えた。
 ドイツやベルギーにも暴動は広がって、
 今日パリで初の死者がでている。
 警官に散弾銃が撃たれ、何人も負傷者が出ているらしい。

 フランスは華やかな国だけど、
 フランス革命の国でもある。
 
 パリの主要道路の下には、
 大抵古い石畳が眠っている。
 5月革命で学生が政府と争った時に石畳を剥がして投石。
 政府が対抗するため、石畳をコンクリートで埋めたのだそうだ。
 今、パリの石畳が残るのは観光スポットか、戦略上重要でなかったところが殆ど。
 だからパリの道路は他の国の道路よりかなり硬いし、長く歩くと疲れやすい。

 私の友人が行っているのは
 そんな国だ。
 
 2日、3日で暴動が治まったなら良かったけれど
 とうに1週間が過ぎた。
 心配にもなる。
 だから、とうとう掛けたのだ。
 
 幸い、
 「まあ近いけど無事。平気よ〜」
 と彼女は笑った。
 
 でも・・・正直やっぱり不安。
 ああいう風に膨らんだエネルギーって、
 どう終わるかが定まらないから。
 誰か、指導者がいるわけじゃない。
 今回の騒動はパリの郊外で移民の男の子が2人感電死したことで起こったそうだけど、
 細かいことはよくわからない。
 
 いつのまにか荒々しい暴力の流れが出来て、
 そこにどんどん新しい人が乗ってきている感じ。

 移民に対する待遇の悪さ、
 差別に対しての不満が膨らんで起こったって言われている。
 でも正直、たいした理由がない(もちろん鬱屈したものはあったのだろうけど)
 便乗組も多い気がする。
 そんな場合、流れを止めるのはとても難しい。
 流れを作っている人たちが見えないからだ。
 はっきりとした形になる何かを求めているってわけでもない。
 
 今日亡くなった人は、
 自宅近くで燃えていたゴミ箱の火を消そうとしたら殴られて・・・・
 という理由だっていう。
 
 そんな理由で死にたくなんか、ない。
 誰だって、自分の家を守りたいに決まってる。
 その人と前々から険悪だったならまだしも(それだってよくないけれど)
 おそらくそれって、「そこにいた」から「殺された」
 
 私の偏見かもしれないけど
 便乗組は確実にいるし、
 その人達は名目をつけて暴力を振るいたいだけだし、
 そういう人達はこういう興奮状態の時には
 何やかや理由をつけて攻撃をするような気がする。

 例えば
 人種的な問題。
 経済的な問題。
 政治的な問題。

 教育に対する不満、
 イスラムの人なら宗教への対応(スカーフ禁止令は私もひどいと思ったけれど)
 小学校や幼稚園まで放火している。
 大変な苦労をされたりしていることだと思う。
 日本人で、自分の国でゆったりと暮らしている私なんかには
 思い及ばぬほど。
 
 でも、その腹立ちは
 こんな風にあらわすしかないんだろうか? 

 今フランスで
 少しでも暴動を構成する流れと異なった特徴のある人は
 やっぱり危ないと思う。
 暴力的な興奮は、なぜか伝染しやすい。
 便乗組が多くなれば多くなるほど、
 その攻撃の名目は言いがかりに近くなると思う。
 
 明確な要求があるわけじゃないから
 納まる所がない。
 だからどんどん暴動は荒れていく。
 
 これ以上何日も続くようなら、
 私は友達にしばらく他の国に行ってほしい。
 「まだまだ遠くだから」
 と、彼女は言ったけれど11日は長すぎる。
 まだまだ治まる気配がない。
 
 何かあったら、
 何があっても一目散で逃げてくれることを祈ります。
 今回の騒動が、一刻も早く治まってくれますように。
 彼女に害がありませんように。。。