みんな祝われる人

 「おめでと〜!」
 「おめでと〜!」と叫ぶたび、
 落ち葉がハラハラと頭上を舞った。

 最初は銀杏の葉っぱを花束のようにして
 渡しあっていただけだったのに、
 段々エスカレートして落ち葉の掛け合いになった。

 両腕を一杯に広げて落ち葉を抱えると、
 精一杯の力で友達の上に落ち葉を振りかけた。
 「おめでと〜!」「おめでとう〜!」
 誰が言い出したのかはわからない。
 別に、おめでたいことがあったわけじゃないけれど、

 無性に葉の散るのが楽しくて、
 おめでとうと言うのが嬉しくて、

 私達は何度も何度も落ち葉・お祝い合戦を繰り広げた。
 まだ、小さい時のこと。

 チン・カン・コン・キン
 グラスとコップとジョッキがぶつかる。
 何度も互いの名前を呼び合って乾杯をする。
 今日は誕生会という飲み会だった。

 サークルの中でも、「誕生日が近い同士を祝ってしまえ」と
 突発性祝いたい症候群に汚染された友人が開いてくれた。
 
 集まった7人中、祝われたのは5人。
 1人か2人が誕生日ならスペシャルだけど
 これだけ祝われる割合が多いと、祝い合うから
 「おめでとう!」の重さも軽やかになる。
 
 「ああ、やっときた」
 「遅いよ、乾杯!おめでとう!」
 「あはは、おめでとう!」
 「最近どうなの?おめでとう!」
 「2杯目が来た、おめでとう!」
        
 みんな結構好きに飲むから
 赤いお酒と、琥珀のお酒と、ブルーのお酒と、日本酒、ビール・・・
 オレンジ、ピンクに、黄に、白に・・・
 テーブルに落ちるお酒の影が、
 混ざり合って万華鏡のようになる。

 なんでもかんでも「おめでとう!」だから
 言ってるほうも、言われるほうも
 どんどんどんどん気持ちよくなる。
 
 上戸も下戸も関係はなし。
 お酒とウーロン茶のグラスがぶつかりながら
 「おめでとう!」に酔っていく。
 目が合うたびに楽しくて、
 お互いクスクス笑ってしまう。
 
 話して、飲んで、乾杯をして
 みんなで笑って、また話す。

 祝う人、祝われる人
 関係なくそんなことばっかりやっていたから
 誕生会だったなんて
 すっかり最後は忘れてた。
 
 そもそもみんな、
 とっても素敵で楽しい人たちばかりだけれど・・・

 言葉って大切。
 「おめでとう」って言葉には、
 嫌なイメージがまるでない。
 ポンポン投げ合っているうちに、
 お互いが「おめでとう」に染まっていく。
 
 「ありがとう」も、そう。
 「こんにちは」とか「おはよう」とかの挨拶もそう。
 「乾杯!」もそう。
 
 気持ちのいい言葉って、
 心の浄化作用があるような気がする。
 嫌なことがあった時は少し楽に。
 楽しい時はもっと楽しくしてくれる。
 なんだかよくわからないけれど、楽しくなってくる。
 
 どうせなら、そんな言葉を
 多く交わしていきたい。 
 
 言葉って、人の間で交わされるたび
 もらった相手、放った人を染めていくものじゃないかな。

 今日はとにかく、なにがなんでもお祝いしたい。
 ブログを読んでくださっているあなたにも、
 きっと何かがあったはず。
 理由はないけど言わせてください。
 「おめでとう!!」