ココアの夜に

 朝が来て、夜が来る。
 それが繰り返されるたび、
 寒さが存在感を増してきて
 毎日脱皮をしているような気がする。
 見えない薄皮がするすると剥がれるから、服の厚みが増していく。
 
 この頃、
 庭から聞こえる虫の声が段々少なくなってきた。
 ついこの間まで、7種・8種の鳴き声がしたと思ったのに、
 今はもう2種ほどしか聞き分けられない。
 冬の訪れが近づいてきている。 
 
 寒いから
 鍋でコトコト
 ココアを作った。
 
 鍋でと言っても簡単で、
 カカオパウダーを砂糖とミルクで練って、 
 ミルクを継ぎ足しながら火に掛けるだけ。
 買ってくるのも好きだけど、今日はたっぷり飲みたい気分。
 砂糖は控えめ。

 ココアの表面にうっすらと白い渦巻きが出来る頃には、
 部屋中に甘い香りが広がっている。
 
 ココアって、
 昼間じゃなくて、夜飲む飲み物。
 そんな気がする。
 夜じゃなくても、
 朝なら早朝、暗い間に。
 昼なら15時を過ぎてから・・・。

 昔、ヨーロッパでココアが流行ってから4世紀。
 人間が、カカオを知って2300年が経っている。
 同じ量の金と交換された時代もあったのに。
 飲もうと思ったら
 すぐ飲める場所と時代にいるってなんだか不思議。

 鍋から下ろしてコクッと飲むと、
 体の中にココアの道が出来ていく。
 寒さの中で強張った筋肉が、ふわっと解けていくような気がする。
 
 コクコクコクっと飲み切って、
 「カカオには筋弛緩作用があるのだった」と思い出す。

 疲れているとき、寒い時。
 ココアはこちらをちょっと慰めてくれる。
 
 何年か前、
 友達の家に星を見に行ったとき、
 1.5ℓ入る大きな魔法瓶に、たっぷりのココアを作った。
 寒いからってスキーウェアを着て、
 庭にビニールシートを敷いて
 クッキーとココアとマシュマロで夜を明かした。
 山の中だからうるさい明かりもなくて、
 星が落っこちそうだった。

 ボーっとしていると涙が出そうに寒いから、色んな話をした。
 みんな山に響き渡るほど大きな声で笑った。
 夜明けの直前にココアは消えて、
 お日様が出るまではって皆で耐えた。
  
 ココアを飲んでいたら、
 「寒いのに、あったかい」そんな夜が思い出されて笑ってしまった。
 
 どうしているかな。。。
 
 






 犬や猫を飼ってる方へ:
    カカオは、筋弛緩作用があってリラックスさせてくれたり、
    ポリフェノールがたっぷり含まれていたり、食物繊維たっぷりだったり・・・と、
    ニキビ吹き出物の出易さは別にして、
人間には素敵なことがたっぷりですが犬や猫にはとっても危険なものなのだそう。
    なんでも、ほんのちょっと食べただけでも致死量になってしまうのだとか・・・。
    チョコレートのテオブロミンというのが良くないらしいのですが、
有効な治療薬はまだないそうです。
    もし欲しがられることがあっても、どうぞ気をつけてあげてくださいね。