空の話をする人は・・・

「ねえねえ、そのまま外へ出て」
 携帯から、
 今日も友人の声が飛び込んでくる。

 「・・・・・・・月が綺麗なの」
 「・・・・・・火星が、月にぶら下がっているの」
 「あの夕焼け、見た?」
 
 最近、
 あちこちからそんな電話やメールをよくもらう。 

 昔、
 あるコピーライターと会った時。
 「月や星の話をする相手は恋人か気がある人」
 と聞いたけど・・・

 老若男女、残念ながら、
 そういう意味で
 気のある人はだあれもいない。
 好意はたっぷりあるのだけれど。
 素敵で贅沢な瞬間のお裾分け以上の好意は
 ・・・気配さえも、見つからない。
 恋なんて、逆さにしてもでてこない。

 「縁側でお茶を飲むまで仲良くしようね」出てくる言葉はそのぐらい。
 まったく、大好きすぎて困ってしまう。
 いつか全員一度に会わせてみたい。

 特に天文が趣味でもないのに、
 空の話題が多いのは、
 思わず見上げてしまうほど、綺麗な空が続いているから。
 
 ふと、窓際でみた夕焼け。
 どこまでも続くような空の青。
 ぽつんと残った雲の白。
 下弦に沈む銀の月。
 夜に浮かんだ綺羅の星々、朱の星。
 
 どこかで鳴いてる虫の歌。
 葉と葉を擦る風の音。
 空に尾を引く鳥の声。
 
 日に日に勝る寒さの中、
 それと比例して澄んでいく空気の中で、
 ふと、感じるものが増えていく。
 忙しい生活の中で埋没していくものが増えていく。

 緩やかに、足早に色が染め替えられていく季節の中で、
 感じた一瞬を一緒に感じたいと思ってくれる友人がいる。
 それが、本当に嬉しい。

 あなたなら、誰と空を語ります?