月見の晩の泥棒さん

 最近、月が綺麗だ綺麗だと言っていたら
 明日が仲秋の名月なんて季節になっていた。
 いつのまに・・・。
 
 一年を通じて一番澄んだ秋の空。
 明日は(18日)、月が一番真東から昇る日でもあるのだそう。
 最高にまろやかで素敵だと言われて来た十五夜の月。
 この所、つい惚れ惚れと見てしまうわけだと
 もうほとんど丸い月を見る。
 
 月光の下、
 ひんやりとした空気を震わせて、庭から虫達の声が上がる。
 けっして音楽的素養があるわけでもない耳でも、
 2種類、3種類、4種類・・と様々な響きがあるのがわかる。
 我が家のように小さな庭にも、
 沢山の虫たちがしっかりと息づいている。
 
 縁側にそよぐススキや竜胆、秋明菊に囲まれて、
 三方に乗せられたお月見だんご。

 昔、
 お月見の晩にやってみたいことがあった。
 
 お月見の晩の泥棒さん。

 お月見のお供えを忍び足。
 子供はそっと取っても良い。
 お月見の泥棒さんに罪はない。
 そんな習慣があったらしい。

 垣根の向こうから、細い棒を縁側に差し向けて、
 棒の先につけた針のようなもので柿やお団子をこっそりと・・・。
 「別に見つかっても怒られるものではないけれど、こっそりやるのが粋」
 と、その頃読んだ本には書かれていた。
 
 女の子としては、あまりそういうものにワクワクするのも難有りなのだろうけれど、
 私はシャーロック・ホームズよりも、粋なルブランのルパンに惹かれた。
 とてもやってみたかった。

 けれど、
 我が家の周りは外からのぞけるような家は少なく 
 仲の良い近所のお年寄りも、
 食べきれないお月見団子の購入を控える方が多かった。
 (お月見団子、15夜だと15個のピラミッド。と、今日和菓子屋さんに教わった)

 残念だけれどこればっかりは
 お断りして取るのも間が抜けている。
 かと言って自分の家のものを取ってもかなりの間抜け。

 小学校修学旅行の枕投げ、
 ハロウィンのトリック オア トリート。
 やってみたかった子供の無礼講祭り。
 
 枕投げは男の子じゃないのでできなくて、修学旅行の部屋は恋愛話。
 小さい頃はハロウィンを知ってる人も少なくて、
 1人、2人のお家に行ったら終わってしまった。
 家の周りには子供がおらず、
 御年を召した方が多かったのが敗因だったのかもしれない。

 もう子供じゃない
 だからもう出来ない。
 残念だけどそればっかりは、環境状況に拠るものなので仕方無い。
 
 明日が月見と知った途端、妙に待ち遠しくなった。
 待ちきれなくて今日は舌で少し先取りをする。
 
 明日は
 みなさま素敵な秋の夜長を・・・
 
 どこからも、気持ちの良い月が楽しめると良いですね。