子供の頃の経験は

 昨日、小学生の集団と電車の中で遭遇した。
 
 最初にどやどやっと入ってきたのは自由な雰囲気のやんちゃグループ。
 車両の3分の1は帰宅する子供達に占領された。
 ピンクに黄色に青に黒・・・。
 電車の中が一気に華やかになった。
 格好よく帽子をかぶった子、何故か二つ重ねてかぶった子。
 自分の半分くらいありそうなおおきなリュックをしょって、
 家を出る時には綺麗だった筈の髪をくしゃくしゃにして、男の子も女の子も大はしゃぎ。
 
 「見てみて〜私の携帯!かっこいい?」
 「喉かわいた〜、だれかちょーだい!」
 「私の水筒、からっぽ〜」
 「次誰が降りる〜?この駅の人ー」
 「はい、はーい!」
 「みっちゃん、たかくん一緒帰ろうね〜」

 子供の声は大人よりも弾む。
 隣に座った子と目が合ったら、運動会の練習だったの!とリュックサックを指差してきた。
 「明日はね〜、本番なんだよ!」と、私に言いながら、
 一緒にいた女の子が駅に降りるからとドアまで送る間に
 隣の男の子に「すぐ戻るからね、降りたら一緒に帰ろ。内緒よ」と、こっそり囁く。
 ・・・・すごい。真似出来ない。
 小学1年生。
 子供たちの中には色んな可能性が一杯だ。

 2駅ほど行った所で、今度は青い制服のおしゃまな女の子達が乗ってきた。
 賑やかだった先客たちの声が少し小さくなった。
 後から入ってきた少女達も、大体小学1年生くらい。
 こちらは綺麗に髪を整え、先客をちらりと見てつんと澄ましている。
 大人がそんな眼差しをしたらちょっと問題だけど、子供がやるとなんだか可愛い。
 
 後から来た女の子達は、
 先客の男の子達と普通に話している先客の女の子達を時々羨ましそうに見ているのに、そ知らぬふり。
 先客の女の子達も突然髪を整え出した。
 お互い意識をし合っているのが見えてほほえましい。
 
今はまだ意識しているだけだけど、
 そのうち誰かが学校の枠を超えて話し出すようになるかもしれない。
 
 ぼんやりと見ていたら、
 おしゃま少女達の服に目が行った。
 最初は、全員青い服を着ているので制服なのだと思ったけれど、
よくよく見たらみんな違う服だった。
 綺麗に撫で付けた髪に、青を基調にしたワンピース。

 「もしかしたらこれがこの学校のルールなのかな?青い服が校則かしら?」
 と思って隣の長椅子に目をやると・・・
 
 青い服の少女達と同じ駅から乗り込んできていた6人の女の子達。
 こちらは全員髪を二つに結んで、茶色のチェックの服を着ていた。

 1人お洒落な子が出てくると真似をするのかな?
 それとも親同士の仲が良いと似てくるのかな?
 似たような環境にいると好みも似てくるのかな?

 何とはなしに
 鳥の鳴き合わせを思い出した。
 
 今では随分廃れてしまっているけれど、
 鶯や、尾長鶏などを飼って、
 飼い主同士で誰の鳥の囀りが一番美しいかを競う
 なかなか風流な遊びのこと。

 その鳴き合わせでより良い声を響かせようと
 鳥を寺子屋(鳥の)に通わせる飼い主がいたらしい。
 
 良い囀り方をする鳥の下へ
 まだ囀ることも出来ない鳥を連れて行き、
 美しいさえずりを学ぶのだ。

 鶯ならば、
 先生が美しく「ホーホケキョ」と鳴くのに対し、
 幼い生徒は「ホ、ホ、ホ、ケッキョ、ケキョ」と実に下手っぴ。
 鳥も、幼いころの教育によって囀り方が左右されてしまうそうで、
 上手く囀れる様になるまで、飼い主の所には帰らなかったそうだ。
 
 なんとなく
 みんな揃った服を着ているのを見て、そんな話を思い出した。
 同じ学校に通って、毎日他の人の服を見て。
 ファッションセンスを高めていっているんだろうか。 

 おしゃまさんたちのファッションはお嬢様系予備軍。
 みんなそっくりだけど、きっと彼女達のこれからの基本には
 そのファッションセンスが流れていくのだろうと思う。
 装い方も囀り方と同じで、小さい時の一種の教育がそれからを左右するような気がする。

 十人十色の先客達のファッションも自由で私は好きだけど、
 洗練ならば、断然後者。
  
 先客たちは楽しくカジュアルに
 後者はある程度のまとまりを持ったファッションを楽しんでいくのかもしれない。

 電車の中、可愛らしく囀る小学生達を見ながら、そんなことを思った。