万博で出来た友達に!

 少し青みがかった空に、大きな月が浮かぶ。
 ちょうど、二つに割った位の上弦の月
 柔らかに家々の瓦を照らして、屋根の上に白い道が出来ている。
 街灯がなければ、月明かりで歩けそうな日だ。
 暗い駐車場の車の陰で、するりと猫の影が動いた。
 空気が乾いてきているせいなのか、足音が少し響くようになってきた。
 冬になれば、道の隅々にまで音が響いているのじゃないかという位になるけれど、
 その季節はまだ遠い。
 今はまだ半径1mほどに響くだけだけど、落ち葉で響かなくなって、それから先の話だ。

 涼しいのに、昼間の暖かさがどこかに残っている気がする。
 こんな日は、何故か変わった人から連絡がくる。
 今日は、以前万博に行った時に知り合ったヨルダンパビリオンの人からメールがあった。
 「元気?そうだといいな」という短い英文。
 そろそろ万博も終わり。
 ヨルダンに帰るようだ。

 ヨルダンの死海に浮くのは面白かった。
 国内なのに、お金を掛けていくのじゃもったいないと夜行バスで行った。
 早朝早くに着きはしたけれどバスだから、足はパンパンにむくんでいた。
 
 あの時、私はどうしてもヨルダン館で死海に浮きたくて、
 開門と同時に、友達と手に手を取って大急ぎで走っていった。
 その日のヨルダン館入館NO.1。
 まだ人が来ないからとおまけしてもらって
 予定の時間より10分以上長く死海のプールにいた。

 本を持っては行かなかったけれど、
 死海ではまさに本が読めそうなほどふわりふわりと体が浮いた。
 ヨルダン館では
 まるで「ヴェニスに死す」のビョルン・アンドレセンが着ているみたいな水着を貸してくれる。
 着るとバスでむくんだ太ももにはきつく感じたけれど、
 死海に浮いているとみるみる楽になっていく。
 するするするっとむくみが消えて、露骨に足が細くなっていく。
 プールから上がる頃には水着がゆるくなっていた。

 人って随分沢山の水分で出来ているんだ。と、理科で習った浸透圧を改めて体感した。
 おかげでその後の万博巡りの足取りはかなり軽かった。
  
 ちなみに言うと、死海の味は凄まじかった。
 口の中に爆竹を投げ込んだような衝撃が走り、後味として苦味がくる。
 にがりを濃くしたような感じだ。
 あんなものを飲料水には出来ない。
 あれが目の中に入ったら・・・考えるだけでも恐ろしい。
 水を掛け合って遊びそうな中学生以下死海プール禁止の規則も、
 あちらの方が「死海」と呼ぶのも納得がいく。

 まぁ、そんなこんながあって
 向こうの人とぺらぺらと話したり、
 展示をタダで実演させてもらったりといろいろあって何故か仲良くなった。
 すごく仲がいいわけではないが、たまにちょこっとメールをし合う。
 母国語で無い同士、英語はメチャメチャ(笑)
 
 色んな国の人が日本へ来ているのだから、
 やはり万博というのは面白い。
 あなたは万博へ行きましたか?
 万博は9月25日まで。
 
 私のお薦めは
 クロアチア館、ヨルダン館にチェコ館。
 どれも人気パビリオンだけど、
 もしこれから行く予定があるなら是非行って欲しい。

 チェコ館では、まるで3〜5歳の世界に戻ったような気分になる。
 石の木琴、虫の影絵(?)に不思議な鏡・・・。
 例えば石を叩くこと、音が出ること、叩く感触、返って来る反応を楽しむ気持ち。
 物心が付くころには楽しんでいたはずだ。
 その気持ちが濃縮されて帰ってくるのがこのパビリオン。

 クロアチアは、同じことを言うにしても
 センスの良さでこんなにも楽しさが違うのか!と思わせるほど素晴らしい。
 クロアチアのパビリオンに行って、クロアチアに行きたいと思わない人はいないのではないかしら?
 空を、まさに自由に飛ぶようなとても気持ちいいパビリオンだ。

 他にもブルガリアの薔薇のジャムとか・・・お薦めは色々あるのだけれども、
 上に上げた3パビリオンは、絶対保証、強力プッシュ。

 もし、万一あなたが行くのなら・・・
 
 今日の記事は、メールをくれたヨルダンの友人に捧げます(笑)