チョコレート工場へ行っては来たけど・・・

 朝、ちゃっちゃと事前投票をしてきた。
 どうせならこの地区じゃない人に入れたいのにと思いながらも、投票をした。
 最高裁の方々のことはわからないので
 「新陳代謝も必要」と呟いて行動してきた。
 結果は内緒。
 
 家族でも色々意見がわれたのは確かな話。
 それぞれが考えることを、票に託した。
 終わってからは、喧々諤々。
 投票前はお互い内緒。
 それが我が家の絶対ルール。
 
 憂いも晴れて、
 今日が公開初日、「チャーリーとチョコレート工場」を観にいった。
 前々から気になっていたAROMATRIX(映画にあわせた芳香マシーン)を導入している劇場は、
 東京にある2館のみ。
 池袋シネマ・ロサとヴァージンTOHO六本木ヒルズ
 ネットではいくら調べても出てこないのに、新聞に載っていた。
 観にいくことが絶対として決まっている人には下を読まないで欲しいけれど、

 実際の映画の出来は・・・
 原作を知っているのでいくらか点が辛くなっているのかもしれないけれど、
 微妙。

 AROMATRIXの効果は、
 一番初めの上映回に行かなくては意味がないことがわかった。

 映画館は
 どうしてもどんどんお客さんを入れ替える方式なので残り香が残ってしまい、
 効果的な場面で香りを放出しようとしても、
 さほど高い効果が上がらないようだった。
 効果を上げるならば、回が終わるごとに消臭スプレーを撒くべきだと私は思う。
 売店ではチョコレートのドリンクを当然のように置いているので、
 私は劇場に入ったときにその匂いが漂っているのだと思った。
 AROMATRIXの匂いは前から不安を感じていたような
 「いかにも安い」というほどの匂いではなかったけれど、
 「お湯かミルクで割ってください」「ミルク入りココア(アメリカ製)」
 のような匂いだった。
 湯煎で溶かしたチョコレートのような粘っとりとした胃袋を刺激する香りではなかった。
 香りの効果はさほど高くも低くもないので、香りがあるところでもそうでなくても
 映画に対する評価は変わらないだろうというのが私の評価。
 
 映画のセットや美術面につける評価は87点。
 砂糖菓子の船が他のクオリティーと比べるとちょっと低いので。
 それがOKだったら96点。
 ウンパルンパの歌と踊りは原作で培った私のイメージとは違うけれど、完成度は92点。
 この映画でなければ、もっと良かったのかもしれません。
 歌詞は原作どおりです。
 そして・・・
 映画の出来に点を付けるなら42点。
 38点でもいいかもしれない。
 原作に沿っているところもかなりあるし、
 くすりと笑わせるところもあるのですが、
 今回の映画にあわせて作られたオリジナル設定が非常に微妙です。
 昔作られたって言うチョコレート工場の映画は知らないので比べることはできないし、
 映画をそんなに沢山見ているわけでもないから目が肥えているわけでもないけれど、
 私は人に薦めません。

 勿論これは私個人の意見であり、
 全ての方がそう思われるかどうかはわかりませんので御承知置きください。
 映画館を出る時、面白かったと言っていたカップルもいましたから。

 以下、ネタばれありの事々。
 さらにかなりの文句が一杯です。
 気がついたらかなりの激辛です。
 なにがあっても見るという方は、どうぞ読まないでください。
 
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 まず、今回の映画で良いのは
 上の写真にも出したウンパルンパ
 原作を知っている方は御存知だと思うけれど、
 場面場面で様々な風刺を行う小人達だ。
 原作では陽気な遊び人たちによるショーが描かれている。

 今回の映画の中では、妙に生真面目な顔をして踊り歌っている。
 ディープ・ロイという方が全てのウンパルンパを演じているので、ウンパルンパは全員同じ顔。
 同じ顔が妙にシリアスに、ピタリとタイミングを揃えて踊っているので笑いを誘う
 服もくるくる変わるので面白い。
 私が原作で抱いていたイメージとはまるで似ていないし、
 身長が小さいはずなのにアップが多くて殆ど小さく見えなかった。
 でも、群舞(?)は見ごたえがあった。
 
 ベルーカ・ソルトが落とされるリスの部屋も良かった。
 一体リスをどうやって訓練したのか、あれはまさに原作どおり。
 リスたちのチャーミングな仕草も素敵だ。

 だけど・・・
 今回はがっくりが山ほど。
 始めに結末を言ってしまうこともさりながら・・・
 特に役者さんたちの動きに関して。

 まず第一は、とてもたのしみにしていたJ・デップの演じた「ウィリー・ワンカ」。
 
 ポスターを見る限り、陽気さと茶目っ気と、不思議な魅力とを兼ね備えたまさに「ワンカ」。
 ところが実態は、 (「引きこもり気味な感じで・・・」と監督が指示したそうだけど)
 あまりに微妙すぎて観ていてこちらも引いてしまうほど。
 登場シーンからまるで似非マイケルジャクソン。
 マイケルジャクソンはそこまで嫌いじゃないのだけど、ワンカのはしゃぎ方は定まらず微妙だ。
 
 もしかしたら
 マイケルジャクソンのネバーランド=ワンカのチョコレート工場
 という図式が監督の頭にあるのかもしれない。
 良いシーンもあるけれど
 なんだかこの映画は病的でわざとらしくて
 私だったら小さな子に見せたくない。
 ワンカの登場シーンなんか、苦手な子は泣くんじゃないかしら?

 そもそも何年も工場にこもったきりで
 人との付き合いが苦手なワンカを出したかったそうだけど、
 見学する子供達や両親を引かせっぱなし。
 おかげでこっちも頬が引きつる。
 息苦しい。
 映画ってエンターテイメントじゃ無かったかなあ?
 辛い映画もあるけど、
 この映画はカテゴリーに入れるなら、ブラックだけど夢を持たせる映画じゃないの?
 全然エンターテイメントじゃない。
 ワンカ目線の映像は、周りからの冷たい目線で一杯で苦しい。

 はっきり言って、まるで「ワンカ」という人の魅力が伝わらない。
 後半、チャーリーがワンカを「魅力的な人」という風に言うのだけど、それがさっぱりわからない。
 まぁ、チャーリーの魅力の方も・・・あれは脚本がまずいのかなあ?
 せっかくのJ・デップなのに華も無い。
 みんなが並んだ時、その格好で目は引くけれど目が行かない。
 カメラで目を行かせられている気が少しした。
 もっとも、子供たちの中で若干でも息づいた個性を私が感じたのはマイク・ティービーだけだから
 J・デップだけのことじゃない。

  みんな外見はいかにもステレオタイプで、原作の雰囲気は出ているのだけど
 ・・・なんだか妙に華がない。誰が主役かわからない。
 ふわふわっとその場その場の主人公が浮かび上がるのだけど、曖昧。
 映画の合間に出てくるウンパルンパが辛うじて間をつないでいるだけ。
 なんとも言えない。
 
 第一、もう少し子供達を工場の中で楽しそうに興奮させなければ、
 工場さえどこが良いのか観客にはサッパリ伝わらない。
 素敵な素敵なセットなのに、
 ワンカの発言に対して子供達を引かせ過ぎて、
 ファンタジックな工場の中の世界が
 まるで薄いベニヤに描いた書割のように嘘っぽく寒々として感じられてくる。
 (CMでも伝わるように、砂糖菓子の船とチャーリーの家以外は本当に素敵なのだけど)
 画像として切り取ったら、どれも額縁に入れられるみたいにとても素敵。
 なのに動きのある映像として見ると褪せる。
 もったいない話だ。

 確かに原作でもワンカの悪舌にみんな動揺したりするけれど、茶目っ気があるので救われている。
 今回のワンカは、茶目っ気がなく、ひどく病的だ。
 ブラックというより卑屈。
 今回のワンカは、人が大変な目に遭うのをじいっと蟻地獄のように待っているように思える。
 だから彼がちょっと躁的に吐く毒舌は不快なのだ。
 
 オリジナル設定として
 ワンカとお父さんとの思い出が度々フラッシュバックされてくる。
 チョコレート工場を作る原動力となったトラウマだけど、
 私の感受性不足だろうか。
 お菓子への渇望が呆れるくらい伝わってこない。
 トラウマを作りこんでる感がないのだ。

 ・・・そんなものを出すくらいならもっと他のものをきちんと描いて欲しいと思う。
 例えば、チャーリーがどれだけ貧乏か。
 
  貧乏、キャベツスープといいながら、部屋は広い。
  家は俯瞰してみると大きなお屋敷の半分くらいの大きさに見えたりする。
  小さい家というけど、どこが?と思ってしまう。
  崩れかけた家を強調したかったのだろうけど、
  まともな街の脇にそんな家があるのはとてもわざとらしい。
  チャーリーの部屋は天井に穴はあるけれどベットがある。あまり貧乏に見えてこない。
  スープの具がどうのというならスープの中も映してほしいと思う。
  砂糖菓子の船の上でワンカが「如何にも腹ペコ」とチャーリーたちに言うけれど、
  あまり空腹そうにも見えない。子役に求めすぎだろうか?もっとそこは出すべきだったと私は思う。
  そもそも、食べかけのチョコレートを味見した後に置いて行く様な子供が飢えてるって言えるかな?

  ジョーおじいさんが喜びと驚きのあまり立った事がどれだけ凄いことなのか。
   喜んで踊った。
  確かにお年寄りが踊るのでは観客はすごいと思うでしょうが、
 「今まで寝たきりだったのに」というような言葉でもなければその凄さは伝わらない。

 子供達の暴走についてもそうだ。
 オーガスタス・ブルースの暴走。
  ただ詰め込んでいるだけで、まるで美味しそうに見えない。
  もう少し美味しそうにしなければ、あんまりだと私は思う。
 正直、子供たち暴走の中で一番マシだったのは
  マイク・ティービーで、次がベルーカかな? 
 
  親も親だ。
  オーガスタスブルースの親達だけじゃないが、
  みんな事が起こってもウンパルンパの踊りと歌が始まるまで待っている。
  あまりにもそれがパターン化しすぎて、映画としてはなんだかしらけてしまう。
  子供が川に落ちたのに、ただ見ているだけってどうなのか。
  
  バイオレット・ボルガードの親もそう。
  もう少し金切り声を上げてもいいと思う。
 
  ベルーカ・ソルトの親も、腰までしかないフェンスなら、
  一歩二歩で簡単に柵を乗り越えられる。
  ワンカに文句を言う前に、
  さっさと越えれば良いじゃない。越えないのなら、あなたの愛はその位。
  と、心の中で思わず私は呟いた。
 
  マイク・ティービーの親はそんな親たちの中では、
  きちんとワンカに対しての感情があって納得もいった。

  それにしても基本的に
  ウンパルンパの歌が終わってから親の行動が始まるのはいかがなものか。
  せめてウンパルンパが集まる前に、一言ぐらいはワンカにすがるなり怒るなり
  はするだろうと私は思う。

  とにかく皆、与えられた役割が時間によって降って来るのを待っているようで
  いただけなかった。

  最後もチャーリーが取ってつけたように家族愛を振りかざし、
  ワンカに対してひどく上段に構えた態度を取る。