カトリーヌで思うこと



 「あなたのしていることは、犯罪です。泥棒ですよ。」

 一昨日、カトリーヌのニュース映像を見ていたら
 ニュースレポーターが壊れた店の棚からペットボトル飲料を次々に自分の荷物に入れる人に
 そう言ってマイクを突きつけた。
 マイクを向けられた人は黙々と食糧を手にしていく。

 略奪が横行し、無法地帯となっているとTVは言う。
 略奪を見かけたら撃つようにとの命令も一時下った。

 確かに、被害者である彼等のしていることは犯罪だ。
 けれど、それを本人達が後ろめたく思わずにいると思っているのだろうか。
 家には新鮮な飲み物も食料もない。
 お金を払うにも相手がいない。

 払いたくたって、着の身着のままで避難した人もいる。
 アメリカはカード社会だから、お金を持ち歩かない人もいただろう。
 お金がある人も、あんな水浸しではライフラインもずたぼろでカードリーダーも使えず、
 当然銀行もやっていない。
 海沿いの町はもともと貧しい方が多いとのこと。
 日銭を稼ぐような形で生活をしていた人も多いだろう。
 幸運にも家にあったものが流されずに済んだ人も、
 カビたり腐ったりした食糧を前に頭を抱えているはずだ。
 誰もわざわざ略奪をしたい人はいない。
 家に子供のいる人もいる。
 みんな仕方なくそうした状況になってしまっている筈だ。
 もちろん、
 お店の持ち主のことや治安を考えても略奪がよいことだとはとても言えない。
 
 ニュースレポーターは、多くの人の言葉を代弁する仕事。
 もう少し、仕方なくそうしている人の立場も考えて発言をするべきではないかしら。
 「泥棒ですよ」
 と言われた人がギュッと唇を噛んで
 黙々とペットボトルを手にしていた姿が忘れられない。

 人は1ヶ月食べなくても生きていけると言われるけれど、
 1週間水を飲まなければ死んでしまう。
 ストレスの多い非日常の生活は、同じ1日を過ごすにしても
 極度に疲労のはげしいものになっているはずだ。
 道を歩こうとすれば水に足を取られ、流されてきたものに足を怪我したりするだろう。
 いまだに、街に入り込んだ水の排出案は出来ていない。

 時間が経つにつれカトリーヌのもたらした雨と、高潮によって街に入ってきた海水がまざり生臭く
 感じられるはずだ。 
 インドネシアでの津波同様、感染症の心配が広がっている。
  
 水は目の前に広がっているのに、飲むことは出来ない。
 産油施設からの油が漏れるのか、時折水面が燃える映像を見ることもある。
 略奪に参加していない人の中では、脱水症状や空腹を訴える人が一層増えてきている。
 避難する人が多く、ガソリンの不足もあって避難が遅々として進まない。

 日本も5000万円の援助をするそうだけど、これだけの災害に対して世界の動きは鈍い。
 アメリカという国がインドネシアなどの国と違って、お金があるからかもしれない。
 イラク戦争が始まってしばらくの頃には1ヶ月39億ドルだった軍事費は、昨年には58億ドルに
 跳ね上がっていた。
 そのお金を、被害対策に回せないのだろうかと他国の懐事情ながら思えてしまう。
 他の国としても、援助することには吝かではないだろうけれど
 そんなに多くのお金があるのにないと言われるのでは釈然としない。
 アメリカ兵は多いのに、中々避難援助が進まないのもイラクに派兵されている人々が多いから。
 アメリカとイラクはとても遠い国なのだ。
 
 イラクに行っているアメリカ兵たちも、
 他国で争うよりも自分達の国を助けたいと願っているのではないのかな。
 
 友人が自衛隊にいる。
 イラクには今行っていないけど、
 命令されれば行かなくてはいけないし、行くと言う。
 でも・・・災害援助の方が自分達がいる意味に近いのではないか。
 災害救助の手助けなどをしているほうが嬉しいという。
 好き好んで攻撃したり、略奪したりしたいという人はあまりいない。
 友人に命令するのは政府で、政府の政策を作っていくのは政治家で、選挙だ。

 ニューオーリンズ出身の在イラク米軍兵はブッシュさんに対して、
 早く戻してくれと焦れているだろう。

 日本にいる私達はまず何ができるだろう。