夏休みの終わる頃

台風一過と思ったら、
 酷暑の変わりに
 秋の気配がやってきた。
 
 風にのる匂いも
 青草が少しづつ勢力を弱め、
 土が一層甘い香りを放ち始めている。

 夏の土の匂いも甘いけれど、
 秋の熟成されていく香りは絶品。
 これから広葉樹の葉が色づき、
 落ちていくにつれてもっと素晴らしい匂いになっていく。
 今の状態も好きなのだけど、先がかなり待ち遠しい。
 
 台風に飛ばされでもしたのか、昨日から蝉の声をあまり聞かなくなった。
 たまに聞こえる声が少し急いて思えるのは、私の感傷のせいかもしれない。
 葉陰から響く虫たちの声も、一際涼やかに甘やかになってきたような気がする。
 風鈴の音がなくなったので、他の音がよく聞こえる。

 小学生の頃は、ちょうど今日か明日ぐらいに宿題に本腰を入れていた気がする。
 最初の数日に数ページ手を付けただけの真っ白な課題を大慌てで仕上げる。
 出来上がっているものと無いものを比べて
 「絶対に終わらない・・・」と恐れおののいて。
 
 子供の底力は侮れない。
 始業式。
 いつも真っ黒になっている人ほどちょっと眠そうにしていた。
 
 自由研究も色々やったはずなのに、あまり覚えていない。
 6年もあって夏は6度。
 記憶は2つ。

 新聞の天気図を集めたこと。
 (前の年にやっていた人がいて、
 新聞さえとっていれば良いので楽だとクラスで流行った)

 簡易織機を作ってテーブルセンターなどを作ったこと。
 (木に穴を開けるのに使ったハンダこてで足を火傷した)

 新聞の天気図のほうは簡単だったけれど、
 自由研究というにはあまりに不誠実な気だった気がして
 妙に忘れられない。 
 
 自由研究って一体何なのか、今でも良くわからない。
 自由研究のHOW TOものは昔から良くあったけど、
 結果のわかっていることをお仕着せのようにやるのはあまりいただけないと私は思う。
 もちろん、ある程度方向を指し示してくれる人がいないと難しいところもあると思うけど。

 好きなものをとことんやって、素敵なものを作る人もいる。
 クラスメイトが光ファイバーを刺して作ったプラネタリウムはキラキラとして見入ってしまった。
 あのわくわくは、今も忘れられるものじゃない。

 お昼はそうめん、おやつにすいか。
 ラジオ体操、プールに、ザリガニ取りに、またプール。
 先生達がとぽんとぽんとプールに投げ込む塩素の塊。
 うっかり拾っては大慌てで手放した。
 枝に紐、先に裂きイカをくくりつけて小川に垂らした。
 ザリガニを捕まえてバケツに入れると朝には忽然といなくなっている。
 自力で逃げたか猫に捕らえられたのか?
 今でも少し気にかかる。
 池に手を差し込めば、透明なえびたちに小さなハゼが寄ってきた。

 今の小学生達も今頃必死に机に向かっている頃かしら?
 外に遊びに行きたいなってうずうずしながら・・・。
 夏休みもラストになると、
 来年こそは夏の始めに終わらせなくちゃと思っていたような気がする。