目玉焼きのルール

 創業明治28年、今年は創業110周年。
 先日は仕事帰りの友人と銀座をブラブラ。
 住所を頼りに友人が行きたいという店を捜すも、
 見つからず。
 ふらりと煉瓦亭に入った。
 
 煉瓦亭は、初めてカツレツを作った洋食屋さん。
 キャベツの千切りをカツのお供にしたのもこの店が始めなのだとか。
 いまどき風の凄く綺麗なお店というわけじゃないけれど、
 こざっぱりとしている所。
 
 柔らかくて質のよい帽子を対面の椅子に置いた
 品の良いおじさまが
 テーブルでおひげにソースをつけないように慎重に、軽やかにフォークを口に運んでいる。
 
 大学生のカップルがくすくすと笑いながら
 お互いのメニューを食べあって批評している。

 なんだかとっても懐かしくて「銀座」だ。
 私達はハンバーグを頼んだ。
 
 しっかりと煮込んだソースがたっぷりとかかったハンバーグに
 表面を白く蒸らした目玉焼きが付くのがここのスタイル。
 目玉焼きは乗せやすくするためか丸い形をしている。
 きっと型で焼いたのだろう。

 ぎゅっと汁の詰まったハンバーグが
 空っぽの食道を通って、ずどーん、どんと胃袋へ落ちてゆく。
 洋食屋さんらしい洋食の味。
 美味しいものは楽しい。

 ごはんは舌の味蕾でだけ味わうというけれど
 嘘じゃないかしら。
 食道でも味を判断しているような気がする。

 ナイフの先でぷつりと卵の黄身を溢れさせて
 絡めて食べるのも、また楽しい。
 おしゃべりな二人が、食べだすと途端に口数が減るのは何故だろう。

 ふと気がつくと彼女は卵とハンバーグを別にして食べている。
 目玉焼きが好きな、「好物取って置き型」。
 お皿にはたっぷりとハンバーグのソースが掛かっているのに、
 彼女はテーブルの小瓶を取った。

 「なんだか、卵、味薄くない?」
 それはあなたが卵とハンバーグを一緒に食べていないから・・・
 まあ食べ方はそれぞれだし・・・
 薄味派の私が言葉を返す前に、彼女は小瓶を傾けた。
 「あ!」
 瓶の先から数滴のしょう油が垂れて、目玉焼きの上を滑っていった。
 「信じられない。ソースだと思ったのに!」
 「目玉焼きにソースじゃなくてしょう油なんて・・・」
 ソースかしょう油かわかりにくいと呟き、ソースじゃなくちゃと卵を食べる彼女に
 私は言葉が返せなかった。

 我が家の目玉焼きは、塩コショウかしょう油・・・・ 
 ソースは掛けたことがない。
 聞いたことはあったけれども、意外に目玉焼きのトッピングはバリエーションがありそう な予感。
 目玉焼きって、他に何をかけるのかしら?
 誰かのうちで「あれ、違うぞ!」って思ったことはありますか?