地震が起きて思うこと。




 プール袋を提げた子供達とすれ違ったら
 塩素の臭いに混じって、甘いミルクのような汗の臭いがした。
 くしゃくしゃになった髪の先まで、しっとりと濡れている。
 
 子供の頃、汗を臭いと思ったことはあまり無い。
 ううん、もちろんくさいはくさいのだけど嫌な感じがしない。
 大人になって、くせのあるものを食べたりするから段々変わっていくのかな。
 大人でも、汗は元々臭いものじゃなくて酸化することによって臭いが出るのだと言うから、
 皮脂の分泌量による違いなのかしら?

 小学生達の夏休みはあと半月もある。
 8月30日付近になれば大慌てで絵日記や読書感想文に励むかもしれないけれど、
 子供達の夏は長い。
 元々、7時半頃〜8時には家を出るような生活を余儀なくされている小学生。
 3時4時には開放されて遊びに行っていたはずだ。
 それが夏休みともなれば、朝も、昼も、夜も遊べる。
 1日に3日が凝縮されているようなもの。

 もちろん毎日塾通いしている人もいる。
 でも、塾に行っても夏はなんだか雰囲気が違う。
 夏期講習には色んなとこから小学生がやってくる。
 今まで来なかったからってやってくる子もいるかもしれない。
 勉強と言うおまけはあるけど、空き地交流のなくなった今、
 塾はみんなの出会いとコミュニケーションの場になっている。

 但し、夏休みは長い。
 塾が休みの日もあるし、友達同士道に迷いに自転車で繰り出すこともある。
 新学期になればどこに目があって、どこから影が始まるのか聞きたくなるような人もいる。
 私も上から下まで真っ黒だった。
 「学校のプールに行かなくちゃならないの」
 なんて口を尖らせながらも、足取り軽くパタパタと毎日家から駆け出してプールに通った。
 当然、帰って昼寝したら「今度は市民プール行って来ま〜す」なんて言うこともざらだった。
 どれだけ母に呆れられても、「プールが私を呼んでいた」。
 
 「準備運動しなさいよ」という母の忠告をちょっと気にして、
 2,3度屈伸をしてとぷんとプールに飛び込むと暑さも時間も忘れて泳ぎ回った。
 あの気持ちよさは今も忘れられない。

 今日の昼間、宮城県震度6
 東北地方一帯では大体4〜5の地震が起こった。
 宮城県のある公営のスポーツクラブではプール上の天井が地震の影響で次々と剥がれ落ち、
 多くの人が怪我を負った。
 重症の方もいるそうだ。
 当時100人ほどいた利用者の7割は子供。
 昔の私のように夏休みを満喫していた子供がたくさんいたのだ。

 身を守るものの無い状態。
 地震の影響でガラスや天井の散らばる中を、子供達を始めとする人々は裸足で避難したのだろう。
 きっと履物をどうにかする時間は無かったはずだ。
 子供達の時間は、私達の時間より一層凝縮した時間が詰まっている。
 1日のロスは時間の過ごし方を知っている大人よりもきついものだろう。
 まして空から屋根が降ってきたのだ。
 怖かったはずだ。
 地震で怪我をされた方は、早く怪我が治るといい。
 重症の方もどんどん回復の方向へと進んでほしい。
 
 地震の怖さを肌で感じた彼らは、怪我が治っても外へ出るのを怖がるようにならないだろうか。
 もちろん地震への警戒は怠れない。余震だってくるかもしれない。

 最近は大きな地震が多くて、日本全国どこに行っても不安を感じることは多い。
 東京だって、安全だと胸を張って言えるわけでは全く無い。
 どこへ行っても、どんなときでも万全ということはない。
 だからできるだけの対策をするしか出来ない。
 
 彼等の黄金の夏休みが曇ってしまうことがないといい。
 地震が起きることは仕方が無い。
 けれど、少しでも被害を軽減させていけたらいい。

 被害0は難しいとは思う。
 今回の被害もこの規模にしては少なかったのかもしれない。
 もっと、もっと、被害が少なくなってほしい。
 阪神大震災が起こったとき、免震機能のある筈の物が手抜き工事でがたがたに壊れてしまった
 というニュースも見た。
 少なくとも人災での被害拡大だけは無いようにと強く願います。

 今日は東京でも地震酔いをしそうな位揺れていた。
 今夜は枕元に財布と携帯と水を置いて寝る。