赤い靴

 先日、チエ・トミオカバレエ団の
 チエ・トミオカ帰国25周年記念公演を観にいった。
 
 チエ・トミオカというのは、1969年から1980年までヨーロッパで踊られていた方だ。
 日本に帰ってからはパリ・オペラ座スタイルでのスクールを開講。
 ヨーロッパで培った人脈を元に
 オペラ座のダンサーやカンヌのバレエ学校などでの夏期講習などを進め、
 現在までに25名が海外留学。
 エトワールやソリストとして活躍している人もいる。
 今年もコンセルヴァトワールに1人合格、
 カンヌのロゼラ・ハイタワースクールにも1名が留学する。
 
 そんなに大きなバレエ団ではないのにきちんと成果を上げているバレエ団だと思う。
 うまい人は本当に見ごたえのある踊りをするし、楽しかった。
 まだ精進中の人も多いから、ふらついてしまったりする人もいるのだけど
 その辺は御愛嬌。

 オペラ座で踊っているダンサーなども出演しているから、メリハリもあって結構楽しい。
 個人的には牧神の午後を踊った13歳の中村駿高君の踊りが爽やかで良かった。
 まだまだこれからだけど、日本人の男性ダンサーは少ないから楽しみ。

 何故今日はそのバレエ団の話を書くのかといえば、
 私が過去にそのバレエ団にいたから。
 でも、そこでまじめにやっていたかといえば・・・さっぱり。

 発表会があるのに夏は旅行三昧だし、
 バレエの良さなんかさっぱりわからずレッスン道具で遊んでいた。
 そして小学校の途中で辞めてしまった。
 10年近く習っていたのに。
 今ならバレエも楽しいし、続けていればよかったと少し考える。
 
 当時も先生がヨーロッパで活躍していたことはなんとなく知っていたけれど、
 子供にその凄さは実感できなかった。
 ちょっと、惜しかったな〜^^
 少なくともバレリーナーの将来、今は無い。

 バレエを習っていたとき、学んだことがいくつかある。
 指先まで神経を使うこと。
 良い姿勢を保つこと。
 体を愛すること。
 体の切れの作り方。
 その他たくさん。

 いろいろなことを見た。
 たくさんの事を教わった。
 
 例えば、靴の大切さ。
 
 バレエをやっていると、
 初めは柔らかい皮のバレーシューズを履く。
 体が出来てくると、トウシューズになる。

 トウシューズは靴のつま先をさっくりと切り離して固い蓋を取り付けたような形。
 
 クラシックバレエは、地上から離れ、天上へ上がろう、上がろうとするような踊りだ。
 だからバレリーナー達はいつも極力爪先立ちをして、少しでも上にいようとすることになる。
 当然、体を支えるためにトウシューズのつま先は硬い。
 軽くトンカチで叩くとこつこつと音がする。
 トウシューズで釘を打ったら、若干靴に窪みが出来るかな?っていう硬さだ。

 当然そのまま履けば痛いから
 バレリーナーはみんな靴の中に詰め物をして、一生懸命に立っている。

 幼心に年上のバレエ団のお姉さん達の足に心を痛めた。
 レッスンに励む彼女達の足は、多くが外反母趾になっていた。
 それはもう職業病。
 一生懸命レッスンをする人ほどひどいことが多い。

 当時10歳程度だった私はつくづく思った。
 「靴はしっかり選ぼう」って。

 バレエをやっていれば外反母趾の症例には事欠かない。
 レッスンの後、血豆の出来た足にテーピングをしたりしているのも何度も見た。
 バレエ以外のときは極力スニーカーを履いたり、マッサージに励んだりと
 みんな予防に積極的に取り組んでいた。
 あまりひどければ手術しかない。
 そんなことになれば、バレエ人生を縮めてしまう。
 必死だった。

 外反母趾はとても怖い。
 放っておけば膝や腰を悪くして歩行が困難になったり、
 まるで関係ない病気を引き起こしたりする。

 バレリーナでなくても外反母趾もちは多い。
 可愛いサンダル、綺麗な靴を痛さを我慢して履いている人を私は何人も知っている。
 変形した足を見せたくないからと、サンダルを履かないという人もいる。

 やっぱりお洒落はしたいから、
 その気持ちはとってもよくわかる。
 でも、だから。
 長く履き続けるために、履いたら自分の足のケアをして欲しい。
 楽しく履くために自分の靴をもっとしっかり選んで欲しいと私は思う。

 せめて靴を買うときに、
 1、履いてみて感触を見る。
 2、前から、横から見て甲が圧迫されているか無いかの確認。
 3、甲との隙間が開きすぎていないかの確認
 4、店内を一周ぐらいして確かめ
 位はして欲しい。
 
 ちょっとはいてみて
 「これでいいや」
 って買い方だけはしないで欲しい。
 
 どうしてもの時は極力体のケアを忘れて欲しくない。
 男の人も、女の人も。
 
 靴と足は一生のお付き合いなのだから・・・

 靴にもっと気を使いましょ!
 いい靴は歩く姿を変えたりもする。
 靴を変えただけで、背筋の曲がった人がぴんと伸ばして歩けるようになったと言うのもよく聞く話。
 ねえ、みんなでどんどん素敵になっていきましょうよ!



 チラシの写真、上手く撮れなくってごめんなさい。
 お目汚し。
  
 

  赤い靴:目の悪いおばあさんと暮らす少女が、教会へ行くときにお洒落をしたいと願います。
      3度おばあさんの付き添いに教会へ行くがこっそり足元には赤い靴。
      きちんとした格好をしなくてはならないのに、赤い靴なんて履いていることを知られたら
      怒られるので嘘を言ってごましてしまいます。
      しかし、ある時教会の前にいた老兵に
      「そんなに踊りに行きたければ、くっついてしまえばいい」    
      と言われてしまいます。
      当然、おばあさんにも教会に行くには不謹慎な格好をしていることを知られてしまいます。
      怒ったおばあさんは「お前のようなものは一生踊っているがいい」と言い・・・
      (記憶がちょっと曖昧で、おばあさんの言葉がきっかけだったか、
       老兵の言葉がきっかけかはっきりとしないのですが)
      少女の足が勝手に踊りだします。
      朝になっても、又夜が来ても少女の足は動きを止めない。
      とうとうある猟師(首切り役人説もあり)に足を切断してもらって
      踊りから開放されると言う結構怖い童話。
 
      この話を好きな人は多くて、モチーフにされた映画なんかもたくさんある。
      映画「赤い靴」ではバレリーナーのモイラ・シアラが踊ったことで有名。
      この童話から
      「赤い靴を履いている」=踊りに魅入られたというような意味で使われることも多い。
      日本だと童謡もあるからその限りではないけれど・・・