舌の退化？それとも適応？
美味しいものを食べるのは好き。
春になれば、ほろ苦くて甘いもの
夏になれば爽やかなもの。
秋はこっくりと滋味のあるもの。
冬はどっしりとしたものに心が動く。
もちろん、季節の流れだけじゃない。
ああ、今日はこれがいい！
こんな感じが食べてみたい。
たまにはこっちもいいかなぁ〜と、心は跳ねる。
先日、
人が苦味を感じることが減ってきているというニュースがあった。
イギリスだかどこかの研究発表。
食べるものの毒性が見極められ（今私達が口にしているものは一応無害）、
毒のチェック機構だった苦味センサーが不要になってきているのが要因らしい。
そうすると１００年後の私達の子孫は
春の山菜を食べてもあのほろ苦い楽しさを味わえないってことかしら？
なんだかそれはとっても寂しい。
人という種が生まれた頃、人はどんなものが食べられて、
どんなものが害があるのかが全然まったくわからなかった。
お母さんのお母さんのお母さんの・・・と、さかのぼっていけば
どこかで必ず初めてその野菜なり食べ物なりに挑戦した人の側まで辿り着く。
見て、触って、臭いを嗅いで、噛んで、味わって・・・
苦いものは害があるかもって大慌てで吐き出して・・・
そうやって、食べられるものと駄目なものを選り分けてもらったおかげで、
今ぱくぱくと安全に食べている。
私達のおばあちゃんのおじいちゃんぐらい時代。
ううん、もう少し前かしら？
世界中の人がどんどん外へ飛び出した。
私達のひいおじいちゃんか、ひいひいおばあちゃん位には日本からも。
飛び出していった人たちは、混ざり合い、ぶつかって
様々な味覚と出会っていった。
おかげで今は色んな味を楽しめる。
私達が普通に楽しんでいるチョコレート。
実はあれ、元々は祭事に使われていたもので興奮作用がある。
ついでにいうとちょっぴり筋弛緩作用もある。
だからリラックス効果もあるわけなんだけど、
今から数百年前の人があれを食べると幻覚をみたり、トランスに入る可能性が高い。
胡椒や唐辛子も躁状態になってしまったり、ひどい時には死んでしまったりもする。
刺激物に慣れていないと、体自体の調子がおかしくなってしまうのだ。
今の日本人は胡椒もチョコレートも唐辛子だって大丈夫。
でも、考えて。
小さい頃、周りでキムチ鍋が食べれる人はどのくらいいた？
今ではみんな当たり前のように食べている。
でも、少なくとも２０年前はたくさんの人が辛いものを食べてお腹を壊していた。
体が「何これ？こんなのしらない！絶対悪いものだよ！」って叫んでた。
親が食べていたり、小さいうちから食べなれていくと、
体はそれを毒物だと感じないように適応していく。
それが体の学習能力。
で、最初のニュースの話に戻るのだけど、
「人が苦味を感じなくなった」
刺激はあっても、
口にするもので害のあるものがないからセンサーが必要なくなって退化したという説。
これってどうなんだろう？
本当に退化かな？
私には実は適応・・・進化に思える。
今、世界中で環境が劇的に変化して、生態系も従来どうりが怪しくなっている。
今まで食べてた穀物だって、突然毒素を持たないとは限らない。
確かスギヒラダケで具合が悪くなった方、亡くなった方が去年急増した。
あれだって、今まで報告されてないことだ。
それを考えれば、これからの世の中を行くには苦味センサーが必要だ。
人の体がそう簡単に退化の道を行くとは私には思えない。
だから、私思ったの。
すごく怖いことだけど。
人間は進化に連れて、段々とグルメになってきたけれど、
これからグルメなんて言っていられない世の中になって行くんじゃないか。
センサーが鈍くなってきたのは食生活の変化だけが原因じゃなくて、その現れなんじゃないかな。
もちろん、世の中がそうすぐに変わるなんて思わない。
数十年じゃそう簡単に変わらない。
でも、人という種が世に適応するのも、
「本当にそんな世の中になってからじゃ遅すぎる」
って体が考えて前倒しに適応しているのかもしれない。
あくまで想像だけど
苦味センサーが利かなくなってきたのは
苦いとか辛いとかで好き嫌いを言って食べるより、
まずくてもなんでもとにかく「口に入れて、噛んで、飲み込む」ような世界が
近づいて来たからじゃないかって。
私は凄く怖くなる。
生態系も狂いだした。
世界の人口は６４億人を突破した。
宇宙食としても対応できるように作られたカロリーメイト。
栄養素ばっちり（最近では味も、まあ悪くない）
「人口増加に伴って食糧危機が起こる。その時代のために開発された」という説が
まことしやかに流布されている。
妙にそれが思い出されて、私にはぞっとするニュースだった。
ほんとにそんな進化なら嫌になる。
しっかり美味しいものを食べておかなくちゃ！
いつか甘さも感じなくなっていくのでしょうか？
