日焼け止めの塗り忘れ。

 実は、この間の盆踊り最終日。
 海に行っていた。

 当然、行くはずだった盆踊りにはいっていない。

 会場にあった人に、「もっと盛り上がる大会がある」と聞いたせいでもある。
 もちろん、一番の理由は「今年初の海」に惹かれた為。
 思いつき企画のため
 前日に誘われ、
 盆踊りを思って行くと決めるまで悩むこと半日。
       ・・・・・もうなんでこんなに盆踊り好きなんだろう。

 横須賀からフェリーで5分、10分行った所に猿島はある。
 羽の端から端まで1m近くあるような鳶が風に乗って舞っている無人島だ。
 こんもりと茂った山や、切り立った崖の方には行かなかったのでよくわからないが、
 海岸では朝早くからバーベキューセットやテント(もとい日除け)が張られ、
 小さな浜には、続々と多くの人がレジャーに訪れる。
 地元民のレジャー島といったところ。
 
 近くにこんな所がある人たちが少しうらやましい。

 海に入る前に下ごしらえ。
 バーベキューセットに炭を入れ、火を起こそうとすると・・・・
 
 「情けない」(笑)
 火を起こせる男の子がいない。
 当然、炭の並べ方も知らない。
 どうやら飯盒炊爨もやったことがないらしい。
 仕方がないのかもしれない。
 アパートやマンションなら、炭で火を起こす場所なんかない。
 
 だから、
 火を起こせないのは認めます。
 力仕事はやってくれるし、
 火の管理ぐらいはする。
 
 でも、でもねえ、
 炭を並べるのに軍手を使わず、手が汚れて驚くっていうのは・・・
 「それはないんじゃない」と言いたくなってしまう。
 しばらく前から流行っているインテリア・脱臭用の
 綺麗にした炭しか知らないみたい。
 ついでに言うと、
 バーベキューで焦げて炭になった野菜と、網の下で燃えている炭は別だとも思っていた人もいた。
 何を考えているのだか。
 物は違っても、炭は炭よ。
 一応もう20年以上経験重ねているんでしょ?
 と、嘆きたくなってしまう。
 
 彼らなら、
 山で遭難して火を作っても・・・・ごはんを作る前に山火事を作るわ。
 きっと。

 軽く小腹を満たすと
 日焼け止めタイム開始。

 そして、一部の男の子達はやけに夢中になって日焼け止めをぬりたくっている。
 塗りすぎなんてものじゃない。
 全身白塗り状態で、食事以外は日除けの下に引きこもっている。
 水着を持ってこず泳がなかった女の子達だって、足だけは海につけるため
 日差しの下に飛び出していく暑さの中で。
 そんな苦労して日陰にいるのがかわいそうになっていく。

 聞いてみたら、1人は真っ赤に腫れ上がってしまうタイプらしい。
 海も、外も、大好きなのに、下手すると水ぶくれが出来てしまうそう。
 
 もう1人は・・・・休日に海に行っていたことがわかると、
 仕事の相手先によく思われないらしい。

 「なんて、ケチな了見!!」
 休みにどこでどうしようと、自由だと思いません?
 私からしたら、「遊ぶとき遊んで、しめるときしめる」
 というのはとっても格好いいことだし、
 社会人としてバランスが取れているし、
 メリハリがある人の方が仕事は任せたいと思うのだけど。

 四角四面。
 朝から晩まで仕事漬けなんて、心から仕事が趣味な人でもなければ
 人としてバランス悪くて仕方ない。
 そんな風に感じるのは私だけではないんではないかしら?

 砂浜は、体感温度35度を越し、
 海はひんやりと冷たい。
 雲ひとつない晴天の下、
 体のそこここに、まあるい水滴が染み出てくる。

 浜を見渡せば、
 今年の水着の流行がわかる。
 あちこちのバーベキューの中を、
 赤やピンク、青、黒、黄色・・・
 隣のグループではすいか割りが始まった。
 西瓜、メロン、バイナップル・・
 そういえば、準備万端、リヤカー(昔で言う大八車)引いてフェリーに乗り込んできたのは
 隣のグループだった。
 
 私達も、負けず劣らず、食べて、泳いで、また食べた。
 ステーキたっぷり、エリンギ、ナス、人参、豚の薄切り、ししとう、ピーマン、玉ねぎ、
 焼きそば、鯵、椎茸・・・・とにかくいっぱい。
 スパイスだって、7種類は使ってた。
 バターから、カレー粉、ポン酢、唐辛子まで。
 あんなに至れり尽くせりのバーベキューは初めて。
 初めて幹事でおお張り切りだった友に感謝!!

 夕方、横須賀に戻って
 今度は皆で温泉に行った。
 大楠山の阿部倉(あべくら)温泉。
 車にあった地図にはない小さな温泉。
 傾斜が45度位あるんじゃないか?ううん、もっと?
 というような山の細道を上がったり下がったりして辿り着く小さな温泉。
 横須賀から10分、20分とは思えないような雛な旅館だ。
 
 うっそうとした木々の間から
 日暮が絶え間なく声を響かせる。
 しんとして静かだ。
 緑が濃くて、
 日差しはまだ強いのに、
 妙に爽やか。

 お風呂は、1人1000円位。
 決して大きくはないけれど、小さくもない湯船。
 くっきりと区切られて「男湯」「女湯」の音の聞こえないお風呂。
 窓からは蜩となんだかわからない虫の声。
 懐かしい色をしたタイルを踏んでお湯に身を沈めると
 また、ふつふつと汗が出てくる。
 昼間焼けた所が、ピリピリと自己主張をする。
 
 贅を尽くした。というわけじゃないけれど
 隅々まで行き届いた、こざっぱりとした所。
 明治〜昭和初期の作家の長逗留にむいているような所。
 穏やかな時間が流れている。
 
 お風呂から上がると、
 みんなすっかりくつろいでいた。
 団扇を片手にのんびり。

 気が付いたらずいぶんと時間が過ぎて
 外は真っ暗になっていた。
 45度の道。
 夜は怖い。

 外へ出ると、
 木々の間から横須賀の街が広がった。
 東京程明るすぎず、優しい街の灯り。
 ここの良い所は満月なんだ。
 と、旅館の人は言った。
 きっと、本当にそうだろうなって
 皆もそう思っていることが横顔で見て取れた。

 いつか、ここに泊まりにきてみたいな。
 
 街灯の灯りに照らされて、
 必死で日焼け止めを塗っていた男の子の耳が真っ赤に焼けているのが見えた。
 次の日、会社でなんて言い訳するのかな。
 気休めにビタミンCを上げておいた。
 仕事に差し障りがなかったらいいけれど。