・・・・・なんでそんなところに?

「何故、こんなものがここに!」
 時々、そんなものにぶつかる
 今日はそんな話。
 
 東京近郊。
 1日、数千人もの人が(多分)行きかう
 駅ビルの中でのこと。

 真っ白に掃除された床の上に
 「バナナの皮」らしきものが落ちていた。
 大勢の人が脇を通っていくけれど、
 みんなろくに下を見ずに通り過ぎていく。
 
 バナナの皮を落とすなんて
 誰か転ばせたいのかな?
 そんなもので転ぶ人、いまどき絶対いないって。
 内心そう笑って・・・
 
 近づいてみたら
 穴子だった。
 丸々、一本の蒲焼。
 
 プロピレンの袋にも入っていない。
 発泡スチロールのトレーにすら乗ってない。
 他の残骸も無い。
 ぐでんと穴子が一本。
 
 脇を、誰かのオニューの靴が音を立てて通り過ぎていく。
 どこから来たのかわからない。
 近寄るだけで人とぶつかりそうになる道。
 どうやって落としていったのだか。
 
 見つけた手前
 放って置くわけにも行かず
 
 目の前の靴下屋さんに
 伝えたら・・・・
 
 彼女は小走りでそこまで行って、
 「確かに、あの身の厚さは穴子です!」
 と、のたもうた。
 
 話題を提供したのは私だけれど
 焦点はそっち??
 なんだかとっても違う気がする・・・・。

 そしてしばらく、靴下屋のお姉さん達は
 「うなぎと穴子の見分け方」を語っていた。
 
 うん。
 皆さんお暇だったのね。
 店先に並ぶ3足1000円ストッキングは
 穴子話からしばらくたっても
 動きがなかった。
 
 どうも、あまりに意外なものが
 意外なところにあると
 妙に思考がずれてくる。
 様な気がする。

 いつだか
 終電間際の
 ずいぶん遅い電車に乗ったとき

 扉の脇に
 靴が一足揃えてあった。
 上品に、脱いで揃えて出て行ったみたいにキチンと。

 周りに
 靴下でいる人はいなかった。
 私は終点から電車に乗った。
 一体どこからあったんだろう

 酔った人、くたびれた人の発散する
 静かなのに賑やかな雰囲気の中で
 靴だけが妙に不思議で・・・

 脱いでった人困っただろうなって思うより
 仕立ての良い靴だなぁ
 とか
 下ろしたてかな 
 とか
 タレントさんのスカウトマンは靴を見るって聞いたなぁ。
 (靴が綺麗な人は、足先まで気を配れる人だから)
 なんて
 ぽけっと思っていた。

 そのうち
 酔っ払った人が
 「ここに靴があるぞー!28cmー俺のサイズじゃないなぁー」
 なんて言いながら
 靴の上に靴を履こうとしているのを
 最寄り駅までぼやっと見ていた。
 
 扉を出てふと
 「あれ、遺失物で届けなきゃいけなかったのじゃ・・・」
 と思った。
 なんだかずれた思考は、どんどんどんどんずれて行く。

 扉の中では
 さっきの酔っ払いのお友達らしい人が
 履くのに挑戦しようとしていた。
 
 シンデレラの意地悪姉さまじゃあるまいに
 せっかく仕立ての良い靴も
 それではボロボロ。
 
 それにしても、なんであんなところにきちんと揃えていったんだろう?
 どうもよくわからない。
 
 後々、思い出しては首をひねる。
 周りを困惑の渦に巻き込み知らん顔。
 そんな違和感ありありの落し物。
 
 あなたの記憶にもありません?