アメフトは贅沢なスポーツです
「700人?」
「ほんと?計算間違いじゃない?」
ゴールデンウィークのある1日。
2700人が最大収容人数の富士通川崎スタジアム。
チケット販売の机で、経過計算中の女性が電卓で入場数を計算をし直している。
会場はかなり埋まって、賑わっている。
ひたすらエールを上げ、踊り続けるチアガール達を横目に進むと
こっちだよ!って、友人が立ち上がって教えてくれる。
初のアメフト(アメリカンフットボール)観戦。
10年以上アメフトを見ていると言う方や、学生時代アメフト選手だったという方など、
皆様には申し訳ないながら、初心者の私には嬉しい布陣。
なにもかもが目新しくて、つい質問ばかりを重ねてしまい
「いっぱい聞くね~(笑)」と、笑われた。
どれもこれもが、興味深くて仕方ない(笑)。
ざっくりなルールとしては、ラグビーと同じような楕円のボールを使用。
①ゴール方法は2つ。
・ゴールラインを越えるところまで、手で持っていく
・棒高跳びのハードルのようなゴールにボールを入れるか。
*手で持っていくと、ボーナスとしてゴールにフリーキック(正確には少し違うけど)が追加。
②攻撃側は、相手にボールを取られず、3回の攻撃で10ヤード(約9m)以上進まなくてはいけない
・相手に倒されたら、その場所から試合再開。
・手から落としたら、攻撃開始場所まで戻って試合再開。
・攻撃側のパスを守備側が取ったら、攻守逆転、攻撃終了。
・10ヤード進めなかったら、攻守交代。
③11人対11人でも、登録選手は各60人
・攻撃の時にフィールドにいる11人と、守りの11人は別。
攻守が代わる度にグラウンドの人が入れ替わる
・交代人数・回数無制限。
陣取りと点取りが組み合わさったような種目。
10ヤードを行くよう、行かせないように走り、投げるが繰り返される。
ヘルメットや、体中に入れられた詰め物などが攻守の度にぶつかって、
ガツゴツと、
スポーツにあるまじき音を立てるので、思わずビクっとしてしまう。
とにかく暑い日差しの中で、選手たちは飛び回る。
「アメフトは、専門職でシステマティック」と、元選手で後ろでパス受け走る専門だったという彼が言う。
クウォーターバック(QB)という司令塔以下、
各10人は「長距離を走って受ける」
「蹴るだけ」、「パスするだけ」と役割が細分化され、
いつ、誰が、どこを走るのかの作戦ルートがきっちり決まっていて、
敵の優先順位の把握までがされている。
作戦ナンバーをいつ共有しているのかは0不明なものの、
ゲーム開始直前、互いに向かい合い、ボールが動くのを待つ間も、
QBさんが倒すべき相手の優先順位をゼッケン●番、●番などと声をかけていたりする。
聞くところによれば
基本、QB以外は、自分で判断して動くことはあまりない。
自分が走るべきルートで、決められた瞬間(秒数)までにパスが来なければ
優先順位●番までの人のルートがつぶされたとわかる。
優先順位を判断し、職務を果たし、決められたことを寸分たがえずに
行うように体に叩き込み、決められたルートで対応できない時に限り、
自分で判断するとのこと。
・・・・・ナンカとてもすごいです、アメフト。
「日本では、最初にパスを出すQBが作戦の指示書を腕に付けているんだけど、アメリカではQBにインカムがついて、試合場を上から見ている監督から指示が飛んでくる」とのこと。
モノスゴイです。
完璧に、軍隊の情報伝達・行動体制ではないですか・・・
なるほどアメリカの軍隊上層部がアメフト出身者だらけというのがうなづけてしまう。
他の人を羨まず、自分の特徴を鍛え、優先順位をはっきりさせ、
やるべきことを果たす。
こんなこと、普通にこなせるなんて、お仕事もできないわけがない。
こんなすごいスポーツだとは、まったく知りませんでした。
それぞれの職分が、どれだけはっきりしているのかが、練習風景からもうかがえる。
試合場脇でのパス練習
試合で最初にボールに触れるQB(1チームに大体2人)は、
練習中も司令塔である自分が突き指などしないよう、
決してボールを受けず、
他のメンバーが受け取ったボールをただ投げる「だけ」。
それが、この種目では普通のことなのだそう。
ここまで徹底されていると、本当にあっけにとられてしまう。
そんな話をしていたら、
一人がポツリと
「アメリカでなりたくない職業の15位って、蹴るだけの人なんだよね」
と言った。
攻守でせめぎ合う時には一切試合に出ず、
サッカーでいえばフリーキック1回のためだけに練習している選手が
アメフトにはいるのです。
なんて贅沢に人を使う奥が深い競技なのか。
スケールが大きすぎて頭がくらくらしてくる。
日本車の国の私としては、さすがアメ車を送り出す国だと茫然。
カンカンの太陽の下、みんなでワイワイ夢中で観戦していたら、
体の前半分だけ日焼けして、前後で1人紅白状態。
夢中になるって危ないことだ。